ETERNAL TEARS OF SORROW「CHILDREN OF THE DARK WATERS」

tawachi2009-06-02

 フィンランドのキラキラ系メロディック・デス・メタル・バンドの復活第2作(通算6作目)。凝ったメロディラインと煌びやかなシンセに彩られたいつも通りのEToS節を聴かせてくれるが、今回特に耳を引くのはサウンドのヘヴィ面の充実。時にブラック・メタルを思わせるような疾走感を獲得しており、これまでの彼らにあった、シンフォニックで派手な反面軟弱で攻撃性には欠けるという印象は一掃されている。一方で、シンフォニックなアレンジも大幅増量。思えば前作に収録されていたNIGHTWISHばりのシンフォニック・チューン「Angelheart, Ravenheart」にその兆候は現れていたとも言えるわけだが、今回はその手のアレンジが全編に亘って惜しみなく導入されており、ヘヴィさの強化と相俟って、振れ幅の大きい実にドラマティックな出来に仕上がっている。女性コーラスや普通声といった小細工の挿入も、自然で嫌みがない。今までの路線を着実に踏襲しつつ、アレンジ力の向上により密度を上げてさらなる進歩を示した、現時点での最高傑作と言える。


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SATYRICON @ 渋谷・CLUB QUATTRO

 SATYRICONの1年半ぶり3回目の来日公演に行って来ましたよと。

 開場時間の18時をやや過ぎてクアトロに到着、律儀に階段に並んでいる人々を尻目にまずは様子見にと上まで行ってみると、既に自分の番号はとっくの昔に過ぎているようだったので慌てて入場。物販のTシャツはちょっと欲しかったけどやっぱいいや、とすっ飛ばし、あと「終演後にサイン会を行いまーす」とか言ってCDを売ろうとしてたのもちょっと迷ったけどやっぱいいやとパス(サインのためにCDとかいりませんし、余計なCD買ってサインもらったって持て余すだけだし、メンバーと対面してもどうせろくにしゃべれずに何こいつで終わるに決まってるし、いいんです)、ドリンクもらって最前付近に並ぶ。

 2chのSATYRICONスレなどを眺めていると「チケット買ったけど○番台だった。客ちゃんと入るのかな」といったレスが多かったので、そういえば単独で来るのは初めてだし若干客入りが心配ではあるなと不安に思っていたのだけど、30分もすると後方にはぎっちりと客が詰めかけていて、何だ杞憂かと胸をなで下ろす。あとやっぱり前方には女性客多い。この腐女子どもが!とは別に思ってませんけど。

 定刻の19時になっても始まる気配はなく、随分待たせる。いつまで経っても懐中電灯持ったローディが出てきてうろうろしてるだけで肝心のメンバーの姿はさっぱり現れない。周囲の観客の苛々も徐々に募り、意味のない叫び声やうんざりしたように不満をぶちまける大声が次第に増える。温厚な私も少々苛立ってきたが、前にいた客がひそひそと「X JAPANがどうの」「二時間待ちがどうの」と話しているのが漏れ聞こえてきて、ああそういやこんな程度、Xに比べたら可愛いもんだと思い直し泰然と構えることにする。

 19時30分頃になってようやく客電が落ちた時には焦らされた人々が歓喜の雄叫びと共に前方へ押し寄せてきた。イントロを挟んで一曲目は「Repined Bastard Nation」。新作のプロダクションに合わせたものかどうか(単に自分が前方にいるせいでバランスが悪いだけかも)、今回は随分とドラムが前に出た音作り。お陰様でフロスト様の激烈ドラミングが思いきり堪能できる。
 相変わらず全身覆い隠すほど馬鹿でかく要塞じみたドラムセットだが、脚ぐらいしか見えなかった前回・前々回とは違って今回は頭が出ていたのが嬉しい。頭ぐるんぐるん振り回しながら激速かつ正確無比に叩きまくる狂神みたいなフロスト様の叩きっぷりが格好良すぎてたまらん。
 同じくステージ後方に引っ込んでいるヨンナねえさん、こちらも頭振り要員っぷりは相変わらず。キーボードを弾く機会はますます減って(弾いててもほとんど聞こえない)、楽器なんてそっちのけでひたすら扇風機に次ぐ扇風機。ますます惚れざるを得ない。ただやたら露出が少ない格好だったのが今回ちょっと不満です。肩ぐらいサービスしてくれてもいいよね。
 そしてばっさり切った髪をぴっちりオールバックに撫でつけてスカした様子のサティアー、格好こそ普通の人に近づいたけれども、フロントマンとしての貫禄はますます増した印象。曲間にいちいち胸に手を当てて深々とお辞儀をする様子も柔和ながら威厳に溢れていて格好いい。
 全体としてのパフォーマンスも、サティアーのルックスの普通化と軌を一にするように黒っぽさが薄れ、普通のロックバンドに近づいてきた感じがあった。前回や前々回のように衣装やポーズを統一するようなこともなく、わりとラフ。しかし一方、「To The Mountains」のような曲での邪悪で荘重なムード作りはさすが。Dojoで来たMAYHEMのライヴとか思い出した。パフォーマーとしてのサティアーの実力、それにフロスト様のドロッドロのドラミングのおかげか。
 最後はもちろん「Fuel For Hatred」に「Mother North」で締め。「Mother North」の後半、走りまくるフロスト様のドラムには笑った。何百回とやってきているであろうこの曲で、ましてフロスト様がミスで走ってしまうなどということは考えられないのでわざとに違いなく、何百回とやってきたからこそのちょっとした悪戯というところか。他のメンバーが必死でついていっている様子が微笑ましかった。

 というわけでやはりSATYRICONは最高というお話でしたとさ。

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Former SENTENCED Guitarist And Main Songwriter MIIKA TENKULA Dead At 35

一番好きなギタリストでした。

Former SENTENCED Guitarist And Main Songwriter MIIKA TENKULA Dead At 35 - Feb. 19, 2009

http://www.roadrunnerrecords.com/blabbermouth.net/news.aspx?mode=Article&newsitemID=114733

ラストDVDでサミが言っていたように、彼が新しい音楽を始めることを今や遅しと待っていたところにこの悲報。 自殺や心中、自棄酒の歌はあくまでジョークのはずだったのに、本当にアル中で死んでしまうとはね。

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DIR EN GREY「UROBOROS」

tawachi2008-11-06

 今や日本を代表するヴィジュアル系メタルコアバンドの7作目。ヴィジュアル系としての出自を否定するかのように今時のニュー・メタル/メタルコアに擦り寄った前作「THE MARROW OF A BONE」は、そちら方面からの影響を消化しきれていない上に自分たち本来の持ち味さえも損ない、アメリカ勢の冴えない劣化コピーと堕した実に凡庸で退屈な作品だった。ゆえに少なからぬ不安を孕みつつ今回のアルバムに相対したわけだが、蓋を開けてみれば彼ら一流の美しいメロディが全編に亘って復活していて一安心……どころか、「鬼葬」「Withering to death.」を軽く超える傑作ではないか。
 イントロから続いて幕を開ける9分半に及ぶ大曲「Vinushka」で、まず構成の巧みさに驚かされる。1st〜2ndの頃の長尺曲は冗長でしかなかったことを思うと大した成長だ。以降のコンパクトめの曲でもそのドラマ性は大なり小なり引き継がれており、和風テイストを漂わせた陰鬱なメロディに、アコギ等を効果的に駆使して耽美的な空気を演出する一方、アグレッシヴなヘヴィ・パートをスムーズに挿入する押し引きの上手さが目立つ。演奏力不足ゆえのヘヴィ・パートにおけるもっさり感は相変わらずであるものの、緩急の付け方が上手いのに加え、メロディアスなパートの質が高いおかげで説得力はあり、前作のような野暮ったさは感じられない。ヴォーカルの線の細さも気になるが、これはこれで繊細な雰囲気の盛り上げに一役買っているとも言える(ライヴではきっとほとんど歌えないだろうとしても)。
 あとはライヴでこのスケール感が出せるようになれば誰も文句を言わない存在になるだろうが、さて。

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陰陽座「魑魅魍魎」

tawachi2008-09-13

 国産妖怪ヘヴィ・メタル・バンド、スタジオ・フルレンスとしては8作目となる新作。コンセプトはそのまんま「妖怪」とのことで、いかにもなHMアルバムという趣だった前作から一転、初期の妖怪色を再び強めてきた。ベスト盤「陰陽珠玉」の分け方に倣うなら、前作を「陽」とすればこちらは「陰」とも言え、それはジャケットにも端的に表れている。音作りにしても体感速度を抑え気味に、疾走感より荘重さや妖美さを重視したもので、それゆえにストレートな曲調が居並ぶ前半はややもすると地味にも感じられる。しかし今作の本領は、お祭りソング「しょうけら」(これが中盤に挿入されているのは彼らとしては変則的なアルバム構成か)が終わって一段落ついてから。高速首振りスラッシュ・チューンかと思いきや、中程で急に暗雲が立ちこめる「鬼一口」から、11分28秒に及ぶドゥーム・プログレ大作「道成寺蛇ノ獄」、さらに美しさの極み「鎮魂の歌」へと至る流れは彼らの「陰」の面の真骨頂。初聴時のインパクトこそ過去作に一歩譲るものの、ベテランらしい細やかな作り込みが感じられるスルメ盤

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OPETH JAPAN TOUR 2008 @ 赤坂BLITZ

 待ちに待ったOPETHの二年ぶり、二度目の来日公演に行ってきましたよ。前はラウドパークでたったの4曲だったけど今回は単独だ! ひゃっほう!

 個人的には確か2000年のHAUNTEDとIN FLAMES以来となる赤坂は再開発の結果浮ついたオシャレ感が漂う不愉快めの街になっていて、新しくなったBLITZの前にぎっしり犇めく黒Tシャツの群れがむんむんと違和感を演出、実に頼もしい。プレイガイドでとったチケットの整理番号は841番と遅めで、着いたのは開場ぎりぎりの18時だったが呼ばれるまではけっこう時間がある。まあ今回はプログレだし、どちらかといえば後方からおとなしく見ていたいので特に問題なし。
 15分ほどして番号が呼ばれ入場。物販はパス、ドリンクだけもらって客席へ入ると既に8割がた埋まっている。適当に後ろの方の真ん中あたりに突っ立ってぼけっと待つ。開演前のBGMにはずっと何かのプログレがかかっていて(ANEKDOTENだけわかりました)、いかにもというかもうそのまんまだな。
 開演10分前ぐらいになると会場のスタッフが何やら拡声器でアナウンスを入れ始めた。声は割れ気味の上BGMと混ざって何を言っているのやらさっぱりわからないが「うやくざば(お客様?)」だの「っぽばえーおずうび(一歩前へお進み?)」だのといった言葉がどうにか断片的に聞こえてきて、周りの観客がほんの少しずつだが前へ詰めたところを見るとどうやら「客席が満杯で入れない人がいるので前に詰めてください」といった意味のことを言っているらしい。と気付いて周りを見渡してみると本当に場内は完全に寿司詰めはいかないまでも全体的にその一歩手前の状態で、狭い入り口にまで人がぎっしり、後方であってもたとえば座り込んだりするような余裕はまるでない。BLITZという箱そのものが以前より小さくなっているらしいとはいえここまで大入りの会場を見るのも珍しく、OPETH人気の盛り上がりを窺わせる。

 ほぼ定刻に客電が落ち、バックドロップに描かれたOPETHの大きなロゴマークが一際ライトアップされると客のテンションは一気に上昇、手拍子と共に大きなOPETHコールが沸き起こる。私の位置はけっこう後方なのにもかかわらず私の周りも一斉に「オーペス!オーペス!」、釣られて私も唱和する。
 そして幕開けは新作からの「Heir Apparent」。始まった瞬間あまりの音の良さにびっくりした。音の分離も各楽器のバランスもCD通りじゃないかというぐらい理想的だし、音色はクリア、もちろん音圧も十分。私の位置取りがたまたまよかったというのも勿論あるだろうが、今までこんなに良好な音のライヴ観たことないと思ったほど。だいたい一曲目の初っ端から音がいいというのも珍しい。前座がいないから予め音をじっくり合わせられたということだろうけども、それにしたって観客がいたら音響変わるだろうし。あるいはこの新生BLITZという会場のおかげなのか。
 そんな良好すぎる音質の中、演奏の方も当然のように糞上手。静と動を自在に行き来する振幅の大きさがOPETHサウンドの主要な魅力の一つといえるが、激しいパートのアグレッシヴさ、静かなパートの繊細な情感ともに、高い演奏力のおかげで説得力十分。デス声にも普通声にも深みと艶があるミカエルのヴォーカルもそこに貢献している。また、場面転換に伴うブレイクの決まり具合やリズム・チェンジのスムーズさも半端ではない。たまにミカエルのギターが(ヴォーカルと兼任する忙しさからか)ちょっとずれていたぐらいか。
 セットリストはライヴを意識したものか、そこそこヘヴィ寄りの曲が多いように感じたが、そういった曲でもOPETHの場合少なからず静かなパートが入っているわけで、全体的には勢いで畳みかけるのではなくじっくり曲を聴かせることに重点を置いたパフォーマンスだった。動きも大してあるわけではないし(弾く姿はかっこよかったが。特にミカエルとペル)。メロデス/ゴシック勢の一部といった扱いだったのは登場時だけ、やはり根っこはプログレ・バンドということか。毎回曲が始まる前にチューニングをしっかりやるおかげで間が空いてしまうのもいかにもプログレっぽいが、そこはミカエルが意外と軽妙かつ愉快なMCで盛り上げてくれるおかげで間は保つ。
 観客の方も曲の合間ではミカエルの煽りに反応して盛り上がるものの、曲が始まるとすっかりプログレモード、たまに手拍子をしたり時折激しいパートで拳を上げたりするぐらいでいたって大人しく、ラウドパークの時のようなモッシュなどは望むべくもない。まあちょっと乗ろうと思ってもすぐ変拍子になるしな。
 とはいってもそもそも曲は良いし、音も演奏も素晴らしすぎたおかげで個人的にはまったく退屈はしなかった。「The Lotus Eater」「The Night and the Silent Water」「Deliverance」「Demon of the Fall」あたりの聴きたかった曲も聴けたし(そういえば「Deliverance」の最後のループの止めがピタッと決まってそのまま「Demon of the Fall」に繋がればこの上なく美しいと思ったのだけども、やっぱりチューニングで時間を食ってしまったのはしょうがないか)。「すげえ楽しい」とか「爽快」というのではないけれど、観終わった後の充実感といったらかなりのもの。余韻が恋しくて、帰って「THE ROUNDHOUSE TAPES」や「WATERSHED」をずっと聴いてます。

 あ、でも気になった点が二つだけあった。
・照明がむやみに客席を照らすのは眩しいのでやめてほしかったです。ステージを見ていられないこともしばしば。
・前にいたお兄さんの腋臭がとても気になりました。拳を上げるたびに香ってくるんです><
 以上!

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Versailles「NOBLE」

tawachi2008-07-26

 ヴィジュアル系人脈の方々による様式美メタル・バンド、待望の1stフル。ヒラヒラかつキラキラに決めた勘違いおフランス風のお耽美衣装や、「薔薇の末裔」というよくわからないコンセプト等は紛う方なきヴィジュアル系のそれ(というか、今やヴィジュアル系の中でもここまで濃くやっているバンドは少ないのでは?)だが、その音はといえば意外なほど高度な演奏技術に裏打ちされた、本格志向の様式美/メロディック・スピード・メタル、それもかなり上等のやつである。随所にオケヒやピアノなども導入しつつ徹底して大仰に劇的に作り込まれた曲展開、むやみに充実した器楽面は、海外のその手の一線級と比較しても何ら引けを取らないレベル。特に、多くの曲で長くフィーチュアされたインスト・パートでは鳥肌もの展開が目白押し。その上でヴォーカルは日本特有のキャッチーさを備えた憂いのあるメロディをなぞっており、この手のメロスピ・バンドの中にあって独特の個性を醸し出している。骨格ははっきりとメタルでありながら歌メロはキャッチーな歌謡曲風、というパターンはかのXを彷彿させるし、実際デビュー曲といえる「The Revenant Choir」などはリズム・パターンから節回しから展開からXそのもの(わざととしか思えないが)だったりするが、しかし全体としては単なるXの模倣にはとどまっておらず、デス・メタルメロデス、あるいはRHAPSODY以降の流れをきっちり押さえた現代的なメロスピとして再構築しているのがポイント。これは陰陽座と並び、日本の若手メタルバンドとして世界に誇れる存在ではないかと思う。

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