陰陽座「魑魅魍魎」

tawachi2008-09-13

 国産妖怪ヘヴィ・メタル・バンド、スタジオ・フルレンスとしては8作目となる新作。コンセプトはそのまんま「妖怪」とのことで、いかにもなHMアルバムという趣だった前作から一転、初期の妖怪色を再び強めてきた。ベスト盤「陰陽珠玉」の分け方に倣うなら、前作を「陽」とすればこちらは「陰」とも言え、それはジャケットにも端的に表れている。音作りにしても体感速度を抑え気味に、疾走感より荘重さや妖美さを重視したもので、それゆえにストレートな曲調が居並ぶ前半はややもすると地味にも感じられる。しかし今作の本領は、お祭りソング「しょうけら」(これが中盤に挿入されているのは彼らとしては変則的なアルバム構成か)が終わって一段落ついてから。高速首振りスラッシュ・チューンかと思いきや、中程で急に暗雲が立ちこめる「鬼一口」から、11分28秒に及ぶドゥーム・プログレ大作「道成寺蛇ノ獄」、さらに美しさの極み「鎮魂の歌」へと至る流れは彼らの「陰」の面の真骨頂。初聴時のインパクトこそ過去作に一歩譲るものの、ベテランらしい細やかな作り込みが感じられるスルメ盤

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