DIR EN GREY「UROBOROS」

tawachi2008-11-06

 今や日本を代表するヴィジュアル系メタルコアバンドの7作目。ヴィジュアル系としての出自を否定するかのように今時のニュー・メタル/メタルコアに擦り寄った前作「THE MARROW OF A BONE」は、そちら方面からの影響を消化しきれていない上に自分たち本来の持ち味さえも損ない、アメリカ勢の冴えない劣化コピーと堕した実に凡庸で退屈な作品だった。ゆえに少なからぬ不安を孕みつつ今回のアルバムに相対したわけだが、蓋を開けてみれば彼ら一流の美しいメロディが全編に亘って復活していて一安心……どころか、「鬼葬」「Withering to death.」を軽く超える傑作ではないか。
 イントロから続いて幕を開ける9分半に及ぶ大曲「Vinushka」で、まず構成の巧みさに驚かされる。1st〜2ndの頃の長尺曲は冗長でしかなかったことを思うと大した成長だ。以降のコンパクトめの曲でもそのドラマ性は大なり小なり引き継がれており、和風テイストを漂わせた陰鬱なメロディに、アコギ等を効果的に駆使して耽美的な空気を演出する一方、アグレッシヴなヘヴィ・パートをスムーズに挿入する押し引きの上手さが目立つ。演奏力不足ゆえのヘヴィ・パートにおけるもっさり感は相変わらずであるものの、緩急の付け方が上手いのに加え、メロディアスなパートの質が高いおかげで説得力はあり、前作のような野暮ったさは感じられない。ヴォーカルの線の細さも気になるが、これはこれで繊細な雰囲気の盛り上げに一役買っているとも言える(ライヴではきっとほとんど歌えないだろうとしても)。
 あとはライヴでこのスケール感が出せるようになれば誰も文句を言わない存在になるだろうが、さて。

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