V. A.「Tribute to 聖飢魔II -悪魔との契約書-」

tawachi2010-09-22

 聖飢魔IIの地球デビュー25周年再集結に合わせ、聖飢魔IIと親交のあるバンドを中心とする面子によって制作されたトリビュート盤。前に出た声優による非公認のカラオケ・アルバム(あれの制作意図は実にもって謎だった。内容の酷さもさることながら、信者でもないような人を連れてきて歌わせることに何の意味があるのか)とは違って、今回の顔ぶれはかなりまとも、どころかなかなかに豪華だ。そして中身も、その豪華なラインナップから来る期待を裏切らない力作揃い。どのバンドも自分たちの色を遺憾なく発揮しており、原曲のおどろおどろしさを少し変えて増強した「魔女ヴァージョン」とも呼べそうな「蝋人形の館」、小野正利のクリーンな歌声が素晴らしい「HOLY BLOOD」、切れ味を増したバックに冠の一人舞台が笑える「JACK THE RIPPER」、透明感溢れる北欧メタルと化した「1999 SECRET OBJECT」などはまさにハマリ役。完全にSadie風…というか一頃のDir en grey風に変換され尽くした「STAINLESS NIGHT」や、不気味なプログレ化した「怪奇植物」も、単に面白いだけでなく、普通に格好いい名カヴァーになっている。逆につまらないのは、単に貧乏くさくコピーしただけの「SAVE YOUR SOUL」と、原曲の魅力台無しの「EL DORADO」。後者などはバックを安易に疾走調にしたせいであの雄大な風格が完全に損なわれてせせこましく単調な印象になってしまっているし、スロー・パートのアレンジなどはおちょくっているとしか思えない。ヴォーカルも貧相。よりによってこの曲でさえなければもう少し寛大に聴けたかもしれないが、他ならぬ「EL DORADO」に対してこの仕打ちは個人的には許し難い。

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