UNDEAD CORPORATION「幻想郷から超鋼鉄重低爆音」

tawachi2010-09-23

 若きメタラー2人による東方アレンジ・アルバム。このジャケ、このロゴに、帯タタキは「新世代東方HMの魔神」云々、そしてバンド名は「Zombie Inc.」からか。となればメタラー諸氏には容易に想像がつく通り、中身は90年代終わり頃を思い切り意識したコテコテのメロデスだ。生々しく劇的なツイン・リードといい、随所に現れるあまりにも確信的なIN FLAMESっぽさやSOILWORKっぽさといい、実に堂々としたもので、あの時代にメロデスの洗礼を受けたメロデス病人ならば「これこれ!」と溜飲が下がること請け合い。演奏も巧い。
 そんな完璧なまでのメロデスっぷりだが、このUNDEAD CORPORATIONの特徴はそれだけではない。かの時代のメロデスをあまりに忠実に追い求めれば、単に「メロデスに憧れる日本人が作った内輪向け同人誌的メロデスコピー」に陥りがちになろうが、そのあたりの弱点を東方アレンジであることが見事に補っているのである。「東方アレンジのメロデス」という方向性において彼らがやりたかったのが「東方」ではなく「メロデス」であることは疑いなく、このジャケにしても主題は手前の三妖精などではなく背景に使われた「COLONY」なのは明らかであり、「東方アレンジ」というのはメロデスコミケで売る口実を作るため、メロデスの中に申し訳程度に東方由来のメロディやコード進行を織り込んであるに過ぎないと個人的には邪推するのだが、しかし仮にそうであっても、この東方メロディの導入は最高に効果的だ。東方の中二病なまでに正面切ってドラマティックなゲーム音楽的メロディは、もともとメタルと相性が良いだけでなく、メロデス本家の北欧勢にはない独特のセンスを持っている。そのおかげでこのアルバムは、古き良きメロデスの香りを見事に再現しているだけに止まらない、オリジナルな魅力を放つに至っているのだ。
 同人音楽という特異なフィールドから出現した、奇跡のような傑作。とらのあなメロンブックス等で取り扱っているようなので、メロデス狂いの皆様は是非お買い求めを。

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