EXTREME THE DOJO vol. 20 @ 新木場・STUDIO COAST

 第20回記念スペシャルということで、ただでさえいつも素敵な面子を呼んでくれるDOJOが今回はさらに大変なことになっております。その分チケットもややお高くなっておりますがラインナップの豪華さに比べれば何ほどのこともありませんということで行ってきましたよ。

 開場の15分ばかり前というちょうど良い時間に到着。今回のチケットはA・B区分で、私のチケットはBなのでAが全部呼ばれるまで待たされる。そうしたらAだけで実に900番台まであってさすがに今回は入りが違うなとびっくり。いつものクアトロとかなら到底入りきらないところだが、そこは広ーいスタジオコーストなので余裕。
 物販は男並びに並ぶというかもう鬼のように並びっぱなしだったのでパスして場内へ。入ってみると人はだいたい後ろの方に陣取っていて前は比較的空き気味。真ん中へんの縦になっている柵に凭れるようにして待機する。

■INTO ETERNITY■
 一発目はカナダのメロディックプログレッシヴ・デス・バンドINTO ETERNITY。どうでもいいけど演奏時間の割り当ては30分でオマケ的な扱いかと思っていたら、しっかりロゴの垂れ幕なんかも用意されていてちょっと感心した。
 一応アルバムは二枚ばかり持っているのだけれど、予習はMAYHEMやらAT THE GATESを優先してしまいこのバンドに関しては全くしておらず、曲もほとんど忘れているという体たらく。しかしステージが始まってみるとこれが存外に良くてびっくりした。このバンドの曲は10何秒とかごとにスタスタ〜ゆったりパート〜ブラスト疾走デス声みたいな急転直下な展開を繰り返して聴いてるこっちとしては乗りにくいことこの上ないんだけれども、それを一度の破綻もなく弾きこなすのがまさに絵に描いたような緩急自在っぷりで凄い。中でもピロピロピロピロと間断なく速弾きしているリードギター(トーンも綺麗)、それに30分という短い尺ながらクソ高い金切り声から迫力あるデス声まで、声を嗄らすことなくしっかり出しきったヴォーカルには目を瞠らされた。それぐらいテクニカルなことをやっていながらサービス精神も旺盛、全員がよく動き回っていて、特にヴォーカルは威厳とか貫禄とかとは無縁ながらお茶目で楽しい。他のメンバーの首にシールド巻き付けて頭に噛みついてみたりとか。そこまで知名度の高いバンドでもないと思うが、パフォーマンスの良さからか客席は随分盛り上がっていた。どうせ楽器オタクみたいな青臭いのがピロピロしてるだけだろ?的な色眼鏡で見ていたことを反省。

■PIG DESTROYER■
 お次はPIG DESTROYER。ベースレスにギターも一本ながら気色の悪いSEを効果的に使い、上手い演奏、汚いヴォーカルも相俟って十分なブルータリティを演出。メンバーはあまり動かず、基本的にヴォーカルが汗を垂らしながらうろうろしているぐらいだが、観客はグラインドコアらしく勝手に巨大なモッシュピットを作ってぐるんぐるん盛り上がっている。モッシュに加わらない私にしてもステージをちゃんと見ているような余裕はなく、襲いかかってくる人波を捌くので手一杯。でも痛いけど楽しいです。

■MAYHEM■
 PIG DESTROYERが終わってついに我が本命MAYHEMということで、そそくさと前方へ移動。準備中、中央マイクスタンドのところに地球儀の載った台が運ばれてきて、いかにもMAYHEMな感じに思わず客席からは「MAYHEM! MAYHEM!」とコールが湧き起こる。さらに地球儀の両脇に設置された蝋燭に火が点され、そして前面にあった布が取り払われて豚の生首が登場するに及び、一段と高まる客席の盛り上がり。
 やや念入りなサウンドチェックの後、いよいよMAYHEMのステージが開始。くちゃくちゃのローブだかマントみたいなのを被ったアッティラ様、顔は常に逆光になっていてよくわからないがその格好はいかにも邪教の神官とでもいった風情。呪詛のような禍々しい声で歌いながら地球儀と豚の首の周りを歩き回り、ナイフで豚を弄ぶ、地球儀に水を掛ける、蝋燭の火に手を翳すといった気色の悪い動きで、存在感は十分過ぎるほど。正面に据えられた地球儀の台のせいで私の位置からはドラムセットの裏にいるはずのヘルハマーの姿がまったく見えなくなっており、セッティングの時には位置取りを失敗したかなとちらりと思ったものだったが、いざ始まってみるとアッティラ様から目が離せず、結果的にはどちらでも良かったか。
 選曲にしても新作を中心におどろおどろしい曲が多く、初めて生で耳にしたヘルハマーのドラムは当然感動的な凄まじさであるものの(機銃掃射か?というのが全く誇張でないぐらいの速さと正確さ)、全体的には厳粛で陰鬱なムードこそが支配的。ただならぬ妖気が終始場内に渦巻いていて、雰囲気はまんま何かの怪しげな祭祀空間です。
 観客の方も、最初こそあのMAYHEMを初めて目撃する感動からか物凄い前方人口密度並びに圧力を記録していたが、次第にこの乗りようのない真っ黒な空気に飲み込まれてただ立ち尽くすのみに。
 と思っていたら、後半になって旧作から速い曲が数曲プレイされる。ヘルハマーのシャープきわまりないドラミングはここにきてその凄みを存分に発揮、いやあさすがにすげえ。

DILLINGER ESCAPE PLAN
 MAYHEMが終わったので一旦ロビーに出てドリンクチケットを引き替える。押しくら饅頭の後のビールうめえ。そして後方からDILLINGER ESCAPE PLANを鑑賞。
 メンバー全員が日の丸に「日本」だの「一番」だのと書かれた鉢巻を巻いてステージに出てきて、うわバカみてえとひとしきり笑う。しかしパフォーマンスはそれに似合わぬ凄まじさ、ハードコアらしくガタイの良いメンバーたち全員がのっけからブラスト・ビートに乗ってステージ狭しと暴れっぱなし。動きがやたら派手なものだから見た目には演奏はラフそうなのだが音は全然そうじゃないのが凄い。

■AT THE GATES■
 トリは最近流行の期間限定再集結の流れに乗って来日してくれたAT THE GATES。テクがものすごいわけでも何かギミックが用意されているわけでもないいたって地味なショウだが、終始安定しきったプレイと曲そのものの良さで大物らしい貫禄に溢れており、非常に心地よく乗れた。フロントマンのトマス・リンドベルグも笑顔の素敵な以外と健康そうなお兄さんで、何となくイメージと違うけれどもかっこいい。
 私は「SLAUGHTER OF THE SOUL」とあとはベスト盤的な「SUICIDAL FINAL ART」ぐらいしか持っておらず、それらに関してもさほど聴き込んでもいないきわめてゆるゆるのリスナーだが、鋭くかつフックに富んだ曲の数々には思わず一緒に盛り上がらずにはいられない。正直なところ、多くのスウェーデン人アーティストが手放しで絶賛する「SLAUGHTER〜」は一曲目こそ問答無用にかっこいいものの他はそこまで言うほど凄いアルバムとは思っていなくて、皆が口を揃えて名盤名盤というのも歴史的な意味合いなのかなぐらいに考えていたのだが、それがまさかこれほどライヴ映えする曲揃いだったとは。実際、まったく知らない「SLAUGUTER〜」以外のアルバムからの曲に関してもまったく問題なく乗れるぐらいにキャッチーだったし、なるほど伝説と崇められるのも頷ける。
 アンコールでは一曲目に皆さんお待ちかね、例の「Blinded By Fear」が演奏され、何人ものサーファーが頭上を転がる大変な状態に。顔は蹴られるわ後頭部に肘は喰らうわでとても痛いんだけど楽しいです。HAUNTEDの初来日で聴いたときもそりゃあもう感激したけど、今回こそは正真正銘の本物。あー、たまらん。

 というわけでみんなそれぞれ最高だったね! 長丁場で観客もよく頑張った。そうそう、サウンドも全バンド押し並べて良かったです。もうDOJO良い仕事しすぎ。


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DARK TRANQUILLITY vs THE HAUNTED @ 渋谷・O-EAST

 Dojoでもあるまいに微妙によくわからん気もする組み合わせではありますが、どっちも最高なのでまあよしといったカップリングのライヴイベントに行って来ましたよ。

 開場18時ちょい過ぎに着くとちょうど自分の番号のあたりが呼ばれるところでスムーズに入場。外はアホみてーに寒いので待たずに入れてよかったです。
 物販がまたアホみてーに混んでたので、まあTシャツ今家にアホみてーにあるから別にいいかとパスし、こっちは空いてた(客は誰もいなかった)ドリンクコーナーでビールをもらって客席へ。
 すると物販で客が大量にトラップされていたおかげか、大していい番号でもなかった(200番ぐらい)のにまだ最前1列が埋まっている程度。こりゃ儲けたわいと二列目に陣取りビールを飲みながら待つ。
 開演までいつも長い待ち時間だが、今日はBGMにNILEの「ITHYPHALLIC」がかかっていたのでそう退屈せずに済んだ。ナイス選曲! 出がけにお茶を沢山飲んだ上に腹ごしらえにうどんを汁まで飲んで来てしまい、さらにその上うっかりビールまで飲んでしまったということに気づき尿意の気配に怯えるが、それが具体的に形になる前にライヴが始まってくれた。あーよかった汗さえかき始めればこっちのもんだ。

■THE HAUNTED■
 THE HAUNTEDが最初に登場。大阪ではDARK TRANQUILLITYが先だったようで、わざわざ順番を替えるということはつまりこのカップリングは本当にダブルヘッドライナーだということか。人気はどっちの方があるんでしょうかね。
 HAUNTEDはDojo以来、約2年ぶり。幾分ガタイが良くなったフロントマンのピーター、頭を丸めて髭を伸ばし以前よりだいぶブルータルな風貌を獲得していた。それで相変わらずステージ中を所狭しと跳ね回るわけだから相当なインパクト。ヴォーカルは思い切りブチ切れつつMCではややコミカルな面も見せたりもして、パフォーマンスには前よりも余裕がある。前は遠目で本当に危ない人が暴れてるみたいに見えたが、今回は観客を楽しませようという意思が強く感じられた。
 そして私の目の前にはヤンセン。ピーターのように動きはしないが、上手いわデカいわ彫り深いわでそこに立って弾いているだけで客の熱視線を集めまくり。
 驚いたのは最前付近というこちらの立ち位置にもかかわらず音がものすごく良かったこと。鋭いリフの隅々まできっちり聞こえてドラムも気持ち良い。ヴォーカルの普通声パートだけは聴き取りにくかったが、まああの辺はもともと大して上手くもないので聞こえなかったら聞こえなかったで別に問題ないです。
 ショウ全体を通して、ブチ切れデスラッシュ・チューンを数曲やった後はミドル・テンポの曲を入れて少しクール・ダウン、という流れが作られていたあたりも良かった。おかげで適度に休みつつ、いい感じに暴れることができました。

DARK TRANQUILLITY
 でDARK TRANQUILLITY。いやね、これがHAUNTEDとは逆に音があんまりにもひどいんでびっくりした。全体的に音量が全然足りてないし、ほとんどドラムしか聞こえない。そのドラムもスネアばかり大きい割にバスドラはくぐもっていて随分と間抜けな響きになってしまっているし、先ほどのHAUNTEDが音はいいわペルはむやみに上手いわだったのでその落差もあって、しばらくの間これはどうしたもんかとぽかんとしてしまった。そういや前回のUNITでも最初は音酷かったなあ。ヴォーカルのミカエルとかが頑張って煽りに来たりするのだが、乗れねえっつの。まあ3曲目ぐらいには割とまともな音になって以降は普通に楽しめたが、キーボードの音などは結局最後までほぼ聴くことはできなかった。まあ最前で音に期待する方がバカという話でもあるけれど、HAUNTEDはやたら良かったのになあ。あれが良すぎたのが仇になったというか、もしDARK TRANQUILLITYの方が先に出てきていれば音はそう気にならなかったかも。
 まあそんな訳で疾走曲では何が何やらわからずちょっと切ない気持ちになったりもしたけれど、遅めの曲では比較的よく聞こえ、あの暗く繊細な感じをじっくり味わうことができた。「Hedon」や「Lethe」、「My Negation」なんかはやっぱり最高ですよ。
 それにつけてもやはり格好いいのはミカエル。いつもの薄手の黒シャツに股上のやたら浅い黒ジーンズという出で立ちで、股間がむやみにくっきりしている上に下腹部にあるタトゥーがちらりちらりと覗き大変セクシー。でもってあのしなやかな体と動きに美声、これはもうきっとデスメタル界随一のセクシーフロントマンと言ってもいいんじゃなかろうか。

 というわけで、どっちのバンドもそれぞれに良かったですよというお話でした。あー、首が痛い。


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ANEKDOTEN TOUR IN JAPAN 2008 @ 初台・The DOORS

 ANEKDOTENの来日単独本公演に行ってきましたよ。さいこう。

 会場は初台ということなので、新宿から歩いて向かう。特に迷うこともなく開場20分前ぐらいに着いたが、とにかく寒い。すげー寒い。気温は低いし風が強くてひどい。そんな寒風吹きすさぶ中番号順に整列して待つ。こんな状態だと尿意が襲ってきそうで不安だったが、なんとかそうなる前に入場できてひと安心。

 定刻になり、前と同様アナウンスもイントロ的なものもなく、メンバー4人が普通にぞろぞろと出てきて、ヤンの「オレタチANEKDOTEN!」というMCと共にショウ開始。そのさりげなさと凄まじい演奏のギャップが格好良くてしびれる。
 ステージがでかくて多少は身動きが取れるせいか、それとも高さがあって見上げる形になっているせいか、前回のANEKDOTEN EVEで感じたようなニクラスの自信なさげな頼りなさはあまり感じられなかった。バンドは全体的にあまり動き回りはしないものの、見るからに気持ちよさそうに弾いていてそれが格好いい。曲間でいちいちチューニングするのがテンポを悪くしているようでEVEの時同様気になったが、まあ勢い重視の音楽というわけでもないし、その分長い曲の間いい音を保ってくれると考えれば良いか。音質も上々で、分離も良いしメロトロンもよく聞こえて満足。
 曲目はEVEの時と被ったり被らなかったりで、個人的にはEVEと合わせて聴きたい曲がほぼ聴けて良かった(特に本編最後に「特別」ということでやってくれた「Sad Rain」はやはり感動的)。EVEと決定的に違ったのが曲目ではなくて演奏の中身で、EVEではおおむねアルバムに忠実な演奏を聴かせてくれていたが、この本公演では多くの曲で間奏/後奏が長くとられていて、即興演奏かどうかはわからないが特にニクラスのギターがたっぷり聴けたのが嬉しかった。クリーンな音色でアルバムより5割増ぐらいの叙情的なソロを弾きまくってくれ、思わず目を閉じて聴き入りたくなる場面が何度も。EVEでもちゃんと1時間半ぐらいやってくれたが、あの時は全力ではなかったというか、実力を全部見せていたわけではなかったようで、やはり7000円払ってこちらを観に来て良かったと思った次第。

 終演後ドリンクチケットでビールをもらい、それを持って出て飲みながら帰宅。北風吹く甲州街道を冷たいビール飲みながら寒い寒いと歩きつつ、心の中は良いものを観た満足感でほくほくでしたとさ。


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ANEKDOTEN EVE @ 新宿 Motion

 ANEKDOTEN来日ばんざーいばんざーいということで、単独公演に先駆けてANEKDOTENに日本のアーティスト(どういう訳か知りませんが全部女性ヴォーカル)を3組ほどくっつけて4バンドで3000円(+ワンドリンク)、というお得イベントに行ってきましたよ。単独公演7000円なのに4バンドで3000円なんて鼻血噴くぐらいお得。

 場所は歌舞伎町の片隅にあるちっちゃいライヴハウス。開場時間の5分前ぐらいに着いて珍しくちょうどいい時間に着いたと喜んでみたら、開場時間・開演時間ともに30分遅れることになっただと。しょうがないので早めの晩飯など食ったりして時間つぶし。
 30分後に再び行ってみると、タイミングが良かったようで5番目ぐらいに入れ、おかげで最前に行くことができた。中は大変小さく(確かこのイベント150人限定だったかな)、ステージは本当に目の前で、柵があったらすぐステージ。マイクスタンドとの距離約1メートル、こんな至近距離で畑亜貴とかANEKDOTENとか観たらちびる。
 周りを見渡したら会場にいるのはいつものメタル人より一回りか二回りぐらい上の方々ばかり。考えてみればこれってワールドディスクの客層そのものだ。プログレッシヴだね!

■絵夢■
 今回出てくる4組のうち、最初の2組についてはまるで知らないので、どんなもんかと試聴モードに入る。まずは絵夢というおねえさんが一人で出てきてピアノ弾き語り。綺麗なピアノで始まったと思ったら、意外にハスキーなお声でいらっしゃる。
 ピアノも声も美しくてなかなか良いのだけど、歌詞の言葉選びが平板かつベタで、聴いていて少々恥ずかしいのが欠点といえば欠点か。曲に入る前に長々と歌詞の説明をするのも何かもやもやと恥ずかしい。まあベタだからこその直球勝負的な魅力は充分備えてはいるし、臭くも美しい歌メロと併せてメロスピにも通じる暑苦しい格好良さにもなっている気もする。シングルが出ているみたいなので買ってみてもいいかも。

■殻■
 お次は殻。本当はフルバンド編成らしいが、このイベントのためにヴォーカルとアコギの2人だけで登場。同じ女性ヴォーカルのアコースティック演奏でもさっきの絵夢さんとは打って変わって、透明感のある歌声と、霧を連想させるような浮遊感を持ったメロディで、その冷たく暗いぼんやり感が実に心地良い。バンド編成でやればこれ、そのまんまゴシックメタルだったりするのかしら。これはかっこいい。ディスクユニオンとかにCD売ってるかな。

■死蝋月比古■
 3番目は死蝋月比古、ヴォーカルにヴァイオリンとピアノの3人編成。準備の時、ヒラッヒラの舞台衣装で畑さんが出てきて「やっべこんな至近距離で生畑亜貴だ」とか思ってたら畑さん、「うわっスタンディングなんだ?」「緊張してきたー」などと口走るのでこちらは大いに和む。
 しばらくして演奏開始。1曲目、「月比古じゃないけど聞き覚えが……?」と思ったら、これはなんとANEKDOTENの「Sad Rain」! 短いけど日本語歌詞までついていて、なんというかANEKDOTENへの敬意の表しっぷりに感激する。その後の曲間のMCでも「憧れのANEKDOTENの前座で緊張してます」とか「ANEKDOTENのボックスセット買いましょうね! 私は取り置きしました」といったことを嬉しそうに言っていて、そういうミーハーっぷりを見ているとこちらも何かすごく嬉しくなる。それがなくても畑さんずいぶん腰が低くかつ面白い人で、いろいろと笑わせてもらいました。
 肝心の演奏の方も勿論素晴らしい。アルバムで聴く月比古の曲というのはまあ基本的には好きなんだけれども、フルバンドで鳴っているパートの音がメタル耳にはどうにもショボく(昔から日本のプログレって何故かこういう音ありがちですよね。低予算なのか好みなのか知りませんが)、線の細いヴォーカルとも合わずかなりチープに聞こえる場面が結構あってそこが不満なわけです。しかしこうしてアコースティックの3人編成で聴いてみると、音の隙間が前提となることが却っていい感じに。特に生ヴァイオリンの美しさは格別、これで聴く「メソポタミア」とか実に感動的です。目まぐるしい「ゴブラン」なんかもアルバムで聴くとかなり妙ちきりんな曲だけど、生で観ればむやみに楽しそうな畑さんの様子も相俟ってずいぶんと愉快な曲になってました。
 終わり際には床の荷物を片づけながら我々最前の客に「どもども」などと挨拶してくれ、その笑顔に心はすっかり畑さんの虜。

ANEKDOTEN
 いよいよ大トリANEKDOTEN、前の3組はアコースティックだったがここだけは4人のフルバンド。どうでもいいけどメンバー数が1〜4人と順次増えていて面白いね!
 人数が増えたのと急にでかい白人がのしのし出てきたので、狭いステージが余計に窮屈に。ああ、すぐそこにANEKDOTENが! そして特にたいした前置きもなく、さりげなく始まる演奏。
 フルバンドになってさっきまでより音がでかくなったということもあって、単純に音圧に圧倒される。そして本当に目の前、手を伸ばせば届くほどのところで演奏しているという事実。あの畑さんが見せたANEKDOTENに対する思い入れぶりもあって、感動はさらに倍増。
 曲は新旧満遍なくやってくれたが、やはり生で聴いて圧巻だったのは1st〜2ndの頃の曲だった。変拍子が暗くヘヴィに迫ってくる迫力は本当に凄い。メロディを前面に打ち出した近作の曲も何かこう包み込まれるような感じで勿論良いのだけど、多くの場面で主旋律を担うキーボードが聞こえにくかったのが残念。そこを除けば音はなかなか良好だったのだが。
 場所自体が狭いのでステージングについてはよくわからなかったが、まあ私の場合は完全にかぶりつきで見られたのでそれだけでお腹一杯。ただまあギターヴォーカルの二クラスは見た目も頼りないし立ち居振る舞いもなんだかふらふらしていて、もうちょっとどうにかならんのかとは思ったけど。でもそんな様子を見ることができたのも含めて良かったです。1時間半ぐらいたっぷりやってくれたし。

 終演後後ろを見ると、前座の出演者の皆様もしっかりANEKDOTENを一緒に御覧になっていた模様。さらに一息ついたANEKDOTENのメンバーもすぐに客席の方に出てきて、観客・メンバー入り交じって和やかに歓談モード。いろいろ準備してきたものにサインしてもらっている人なんかもいたり。まあ私はサインしてもらうような道具も持ってないし、持っていたとしても話しかける根性はないので、Tシャツを買った後はそんな幸福な光景を尻目にさっさと退散しましたとさ。いや、いいイベントでした。アコースティックということもあって入れ替えが早いのも良かった。

 というわけで次は13日の単独公演です。ありがちだけど「Sad Rain」聴きたいぞ。月比古ヴァージョンは今日聴けたけど。


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LOUD PARK 07 @ さいたまスーパーアリーナ・二日目

ラウドパークが終わってしまいました! あーあ。楽しかったな。

■寝坊■
 朝はっと目覚めると9時半! やばいやばい始まっちゃうわ、と急いで支度してたまアリへ。いや、家が近くて本当に良かった。
 会場に着くと(水の持ち込み成功ざまあみろというのは内緒ですよ)、既にAMORPHIS目当ての猛者共がステージ前柵付近に群がっていて、確保できた場所は前から2列目。ま、いいか。

■ALL THAT REMAINS■
 30分ほど待ったところで隣のステージにてALL THAT REMAINSが開始。演奏上手いらしいというのはちらりと耳にしていたけれど、いやこれは凄え。全員が巧者だけど特にしかめっ面して叩き続けるドラムの手数足数が異常なことになっている。曲ももともと出来がいいが、やたら上手い演奏のおかげで叙情度も攻撃度も十割増ぐらい。一時期は今回のラウドパークに対し「またメタルコアか? もうリメインズリメインズうっせーよ」ぐらいの勢いだったけれど、そんな十把一絡げにしていた自分に猛省を促す。ステージングも実にアクティヴで手慣れているし、他の多くのメタルコア勢と比べても明らかに格が違う感じ。ヴォーカルの人のやみくもなまでの肉体美と乳首ピアスもイカス。

■AMORPHIS■
 そして待ちに待った我らがAMORPHIS! 10年ぐらい前、未だメロデスだった頃の彼らの初来日公演には行っていないのだが、キーボードを前面に出してその他の楽器の不備を押し隠すようななかなか素人臭いショウだったそうな、当時のブルルンによれば。で、さて10年が経過し既にベテランと言って差し支えなくなった彼らはどうでしょうかと不安も少し混じりつつわくわく。
 蓋を開けてみればもうすっかり熟練者揃い、風格すら漂うライヴでしたとさ。前作から加入したヴォーカルは、小柄ではあるけれど身長の半分ぐらいあるドレッドを縦方向の激しいヘドバンで派手に振り回し、翅を広げて大きく見せて威嚇するオオカマキリばりの増量作戦で迫力のある見映えを獲得する。バックの演奏陣の堂々たる弾きっぷりも見応えあり。肝心の歌、それに演奏の中身もかなりしっかりしていて音質も良く、まさにアルバム通りだった。このヴォーカル。前任者と比べても何の違和感もない声質、しかも余計に上手い。本当にいい人見つけたもんだと思う。
 選曲はやはりここ2作からの曲が中心ではあったけれど、「ELEGY」からも「On Rich And Poor」と「My Kantele」という二大名曲をやってくれて感激。特にこの季節にオレンジの照明の下で聴く「My Kantele」には本気でうるっと来た。どうせなら2ndあたりのずるずるべったりうんこ臭い曲もやって欲しかったが、まあイメージ違い過ぎてできないのかもなあ。
 そんなわけで、こんな良いバンドを10年もほったらかしにしていた糞ビクターの糞担当は腹を切ってバンドおよび全国民に謝罪すべきだと思います。そんで今すぐフルの来日公演30回ぐらい組め。

■ANDRE MATOS■
 AMORPHISでとりあえず満足しきったので(いや長さに関してはもちろん不満ですよ)、次のANTHEMは英三のシャウトがすげーなということを確認しただけで済まし、あとは昼飯。タコスを買って食ったり、ESPのブースでSATYRICON のサイン会の整理券をもらったり。
 客席に戻ると何かタキシードみたいな変な服着たおっちゃんがメロスピやっててはてこれは何でしょうとよく考えてみるとアンドレ・マトスさんでしたそうでした。なんかあの服装にはただの名前をぐるっぐるの飾り文字にした彼のバンドロゴと共通する中二病的恥ずかしさがあって、それがまたいかにもメロスピという感じで生暖かい笑みが浮かんできて大好きですアンドレさん。メロスピ、いやさメタルは恥ずかしくてなんぼですから。
 ANGRAの1stとかは結構懐かしいので、その辺の曲やってくれるといいなと思いつつ座ってじっくり聴いてみる。「Nothing To Say」の後、あれ何かこれも聴き覚えがあるけどANGRAとかじゃねーなと思ったらJOURNEYの「Separate Ways」でした。なんでJOURNEY。ひょっとしてあれですか、ANGRAとは別れてしまいましたけどYou know I still love youでTrue love won't desert youってわけですか。あの声なもんで原曲の繊細さはまるでなかったけど、まあこれはこれでかっこいいっちゃかっこいいか。その後「Angels Cry」からメドレー形式で皆さんお待ちかね「Carry On」へ。このライヴの最初の方では高音が出ていなくて「いきなり声出てねーな」と思ったけど、この頃になると逆に調子が出てきたのか、あの二回転半ひっくり返ったみたいな高音がばんばん出る。最後までしっかり歌いきってました。去年のラウドパークANGRAなんかは「Carry On」の最高音部はメドレーで誤魔化してたらしいけど、さすがアンドレは本家。この曲はやっぱりこの人なんだなあと思いましたよ。

■LACUNA COIL■
 アンドレ・マトスのステージが終了すると同時に必死こいて人波に逆らい前方へと殺到、何とか前の方を確保したところでお次はLACUNA COIL。お隣でやってたWIG WAMはまあかっこいいなーとか思いながら適当に聞き流しつつ、恋い焦がれるのはクリスティーナ・スカビア姐さんの艶姿
 でそのクリスティーナ姐さんが登場すると同時に場内のヴォルテージ、具体的には身体にかかる圧力はMAX状態に。いや、昨日のNILE最前列だってここまでではなかったですよ。去年のSLAYERがこんなもんだったかなってぐらい。それだけ生姐さんの登場を待ち望んでいたということですかメタル野郎共。
 そんな生で観るクリスティーナ嬢、やはり美人。アルバムで聴けるそのままの透明な声を聴かせながら、それと裏腹に勢いよく手だの頭だの振りまくる姿には目が釘付けされっぱなしである。対して、男性ヴォーカルのアンドレアの方はアルバム同様ライヴでも空気ですねやっぱり。ていうか客席の方、私のいたところでは圧力と動きが激しすぎてろくにステージが見えず、そんな私の目の前にアンドレアがいて代わりに肝心のクリスティーナ嬢はあまり来てくれないとかいう状態だとストレスめきめき溜まる。まあでも、そういう眼福的要素抜きにしてもライヴそのものは非常に良かったです。アンドレアが空気だろうが、演奏陣がしっかりしててクリスティーナ嬢が目を惹きつけていれば格好いいに決まってる。

■SATYRICON■
 LACUNA COILが終わった後もそこに留まりTESLAの演奏中は待機、そしてお次はSATYRICON。LACUNA COIL終演後に物凄い勢いで場所の争奪戦があって、結果前から2列目に居座ることができました。これでサティアーかぶりつき。
 イントロでメンバーがぞろぞろと出てきて、全員が配置に着くと同時に演奏開始。途端に場内は独特の邪悪かつ荘重な神秘的空気に包まれ、これぞSATYRICONとむやみに溜飲が下がる。似たような服を着、似たようなメイクをした弦楽器隊+サティアーの4人が等間隔で前方に一列に並び、似たようなポーズで頭をぶん回す光景は実に美しい。さらにその後ろではやはりキーボードのおねえさんが一人獅子舞状態だし。前にDojoで観たときには会場が小さくてサティアーばかりに目が行っていたけれども、この一体化したフォーメーションはこういう大きい舞台でこそ一層映えるということがわかった。フロストは巨大なドラムセットにすっかり埋まって手足の一部分が隙間から見える程度なのだけど、それでもそのあまりに人間離れしたプレイだけで存在感を強烈過ぎるほどにアピール。惚れ惚れする。
 サティアーは相変わらずかっこいいし、演奏も相変わらず整いすぎの要所要所決まりすぎだし、やっぱりSATYRICON最高としか言いようがない。最初の曲でマイクの機材トラブルがあっていきなりサティアーの声が聞こえず、マイクを取り替えても駄目だったり、数秒声が出るけどすぐに聞こえなくなったりを繰り返しているうちに曲の半分以上が過ぎているというようなことがあって非常に痛かったが、それでも安定しきった演奏と堂々としたサティアーのパフォーマンスですぐに持ち直していたあたりはさすが。
 最後は速さ2割増で殺傷力倍増の「Fuel For Hatred」〜お馴染み「Mother North」。ひたすら叫んで歌って、殺伐とした満足感と全力を尽くした脱力感が胸いっぱい。

■サイン会とか■
 SATYRICONが終わったところで腹が減ったので、そのへんの店でケバブのデラックスなやつを買ってビールと一緒に食う。肉うめえ。
 あとESPのブースでのSATYRICONのサイン会にも忘れずに。しかし行ってみるとギタリスト二人しかいなくて面食らう。単にSATYRICONっていうもんだからてっきりサティアーとフロストがでんと座ってるもんだと思ったのに。まあこの方々も十分凄い人達なのでサイン自体は喜んでいただく。それに着ていたMAYHEMのデッドTシャツを褒めてもらいましたよ!「Nice shirt!」だって。

ARCH ENEMY
 そんなことをいろいろやって会場に戻るとSATYRICONの次にやっていたSAXONは終わっていて、HANOI ROCKSのステージに。ほっほうあれがいわゆるマイケル・モンローか、かっこええのうと椅子に座って観ていると、先ほどの肉ビアーにより俄然力を得たスイマーが猛攻撃をかけてきて一瞬で陥落。起きたときにはARCH ENEMYが始まるところでしたとさ。前の方に突入してみようかとも思ったが、SATYRICONで気を放出しきってしまったのでやめて、そのまま椅子のところに立って観戦。
 ARCH ENEMYを観るのはこれで何度目かになるが、目に見えてどんどん格好良くなっていてびびる。今やバンド全員キャラ立ってますしね。特にアンジェラ姐さん。短パンにタイツで脚線美をむき出しにしながら異様なテンションの高さで煽る煽る。新作で見られたヴォーカルの表現幅の広がりが、昔の曲にもしっかり活かされていたのが良かった。
 でも選曲はちょっと不満で、何で「Bury Me An Angel」やらんかね。「Nemesis」とか定番化してるし曲はいいと思うけど、サビの歌詞がダサくて耐えられんです。個人的には。あとアモット兄さん、何千という人が見てる前でアンジェラの肩を抱くとかはやめた方がいいと思います。カップルのいちゃいちゃを観に来てるわけじゃねーんだからさあ。

MARILYN MANSON
 でラスト、マリリン・マンソン。もともと興味はほとんどなくて、まあせっかくだし最後まで観てくかという程度の貧乏性的心構えで観ただけなのだが、これが予想外に良くてびっくりした。アンビエント・ゴシックみたいな一曲目が幕の振り落としで始まって、スモークを焚かれた赤い光の中にマンソン氏のシルエットが現れた時点でこりゃただもんじゃねーなと思わされる。最近毒が抜けたとか丸くなった(体型も)とかよく聞くけど何のその。まあ曲自体をアルバムで聞いている分には私とかにとってみるとだるいのだが、ライヴになるとマンソン自身の存在感がそれを補って余りある。一曲ごとに衣装やら趣向を替えてくるし。どちらかというと、曲を道具に使ってマンソンがパフォーマンスしてるという感じか。何にしろ、基本ほぼ一人であれだけの会場を全部自分のものにしてしまっていたのだから大したもの。カリスマってこういうのか。恒例らしきケツ出しも見られたし満足です。

 というわけでラウドパーク07、何だかんだで去年と同様目一杯楽しめた。事前に面子を聞いた分には「去年に比べると微妙なラインナップだな」というのが本音だったものの、実際観てみると意外とかっこいいというパターンが結構あったり。あと今回の会場だと去年と比べて音が格段に良かったのも大きな評価ポイント。客席部分とかの形状で音が反射しにくいとかですかね、よくわからんけど。あとトイレが多いのもいい。このままこの会場でラウドパークやるっていうのが毎年定着するといいな。


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LOUD PARK 07 @ さいたまスーパーアリーナ・一日目

 ラウドパークに今年も行って参りましたので、感想とかちょっと書いてみますよ。

■入場・下見■
 前日深夜まで雨降りまくりだったのが嘘のように晴れてたいへん良いお天気。どうやらメタラーには私を筆頭に日頃の行いが良い品行方正な紳士の方々が多いらしい。
 10時過ぎに会場に着くと、入場整理の行列はちょうどピーク状態。まあ晴れているので何ほどのこともなく、天候に感謝しつつ入場。
 入ってみるとたまアリの中は何やらえらい複雑そうなので、開演までの間見て回って構造を一通り把握してみることにする。ふむふむ便所がいっぱい設置してあるのは親切で好感度高いですね。とか思っていたらいきなり自分の現在位置を見失ったファック。あとそこここにある売店がぼったくりでむかつく。茶とか300円ですぜ。それもペットボトルじゃなくてコップに注いだやつ。飲食物持ち込み禁止にしておいてこれとか常套手段とはいえ阿漕にも程がある。去年とかはペットボトルを普通の値段で売ってたように思うがなあ。違ったっけ。

■CELLADOR■
 適当に進んでいたら何とかステージのところまで戻れたので、朝飯にナンドッグなどを買い、客席に座って食いながら待機。ほどなくしてMCに続きCELLADORのステージが始まった。
 ヘッコだヘッコだと聞いていたけれど確かにそうで、HELLOWEENの演奏部分を倍速にしてるような感じ。なんかギターだかベースだかの人が「日本人彼女募集中」とか書いたTシャツを着てたり、ドラマーは日の丸に「必勝」って書いた鉢巻きをしてそれがしょっちゅうずり落ちたりしてメンバーの格好はバカみたいなのだけど、演奏はかなりのもの。ギター二人は高速で実に悶絶的にハモるし、終始バスドラを安定して連打しっぱなしのドラマーも凄い。ヴォーカルは歌い回しから性質からキスクそっくりだし。
 予習もしてなければ予備知識もほとんどなく、まるで期待していなかったところになかなかすげーものを見せられてテンション上がったことですよ。

THERION
 しかしテンション上がった端からさっき食ったナンドッグの血糖値シグナルが脳へ届いたらしく、早くもスイマーの攻撃を受けて撃沈。OUTRAGEがわりと熱いことをやっているなと思いつつもそれを味わう間もなく夢の世界へ。約30分、せっせと仮眠を取ってしまいました。
 で目覚めたところで次はTHERION。いや、これには始まった途端度肝を抜かれた。とりあえず前に弦楽器隊3人、後ろ中央にドラムというのはいいとして、ドラムの左右に男女一組ずつ計4人のヴォーカル、というステージ配置がまず異様。後ろにいるのはコーラス隊とキーボードかな、とか思ってたらその位置で普通にリード・ヴォーカルを取り始めたから驚いた。そうか、さっきからむやみに飛び跳ねてた顔怖い人はスノーウィ・ショウか! 4人中女性一人がほぼ完全にコーラス役で前面には出てこないのだが、残り3人が適宜前方へ出てきては(もしくはそのまま後ろで)交代で、あるいは複数同時に歌ったりする。この3人が3人ともかなりの巧者、客いじりも上手く(特にスノーウィ・ショウの爬虫類声による「Hey! Hey!」は迫力があり過ぎて困る。相当本格的っぽいソプラノ声を操りながら客にアピールする女性ヴォーカルの人も凄い)、その入れ替わり立ち替わりのステージングもあって、何やらオペラでも観ているような感じ。服装なんかの道具立てもそこによく効いている。シアトリカルという言葉がこれほどぴったり来るライヴというのもそうそうなく、こんなライヴをやるのは本当にこのバンドだけだろうなと確信できる個性的さ加減である。いやびっくりした。1曲目が終わった瞬間、周りから「おぉ……」と感嘆の呻きが漏れたのも当然の流れか。これが観られただけでも今年ラウドパークに来た甲斐があったね。

■STILL REMAINS■
 曲とかは全然知らないのだけど、次の次にあるNILEの場所取りのためにわりと前の方に行ってちょっと頑張ってみる。曲の開始後すぐに目の前にでっかいモッシュの輪ができてびびった。さすがメタルコア
 しかし肝心のステージの方はちょっと見劣りがして、なんだかなあ。何よりいけてないのはヴォーカルで、デス声はそう悪くないのだけど普通声が致命的なまでにへにょっへにょで萎える。メロディラインが特に印象的というわけでもないので、そんな取って付けたようなのならいらねーのにとか思った。サウンド全体もなんだか迫力不足。キーボードも装飾や特殊な効果を加えると言うよりは、軟弱な感触を強めているようにしか聞こえなかった。

■NILE■
 STILL REMAINSが終わって客が出て行くのと入れ替わりに前方へと進み、前から3列目あたりを確保、NILE観戦に向けて万全の体制を整える。待っている間にお隣でやってたFASTWAYは私にとってはまるで用のない音楽のようだったので、適当に聞き流しながら目の前のステージに集中。機材チェックのためにクマぷーのような風貌のカールさんがにこにこ笑いながらのしのしと出てきたり、頭頂からの後光も眩しいダラスさんが同じようににこにこ笑いながら出てきたりして、嬉しくなってメロイックサインなど差し出したりしてみる。
 そして始まるNILEのステージ。お馴染みエジプシャンなイントロに続き、響き渡るのはあの衝撃の超絶ブラスト! 最初の方ちょっと音がぐしゃぐしゃだったのと、あとベーシストがDojoで観たときの人から替わったのか、あの壮大な頭扇風機が観られなかったのは少し残念だったものの、意味不明なほどの音数のドラムを中心に人智を超越した名状しがたき古代の呪いじみた演奏は堪能させていただきました。異様に怪しげに張りつめる濃密な空気、それと音数は間違いなくこの日一番。
 Dojoでは人を突き放すかのような超絶演奏ぶりに、多くの観客が感銘は受けたもののどうやって乗ればいいのかわからないといった風で茫然としていたけれども、今回はそうでもなく、観客の皆さん結構頑張って飛び跳ねるしサーファーも出っぱなし。これは明らかにダラスの客扱いが上手くなったということでもあるし、また新作が前作の流れを引き継いでことさらにメリハリを効かせたフック大増量の曲で占められていることも大きいか。

■ちょっと休憩■
 その後は少し真面目に観るつもりだったものの、NILEを観てああーいいもん観たやっぱ最高と満足したところでテンションが下がり、椅子で寝たりぶらぶらと物販で買い物したり飯を食ったり。AS I LAY DYINGは去年に続いてあまりちゃんと観なかったけど、格好良かったですよと。NOCTURNAL RITESの時は寝てしまいましたよと。MACHINE HEADの時は物販でNILEのTシャツ買ってましたよと。MACHINE HEAD、格好いいことやってるのはわかるのだけど音がでかいばかりでぐっしゃぐしゃに潰れててよく聞き取れませんよと。客席から通路へ出た、つまり壁一枚隔てたところの方がよく聞こえるとかどういうことですかと。

TRIVIUM
 METALLICAそっくりで大人気!という評判、さらにそこへどっかの店頭で曲がかかってるのをちらっと聴いて「あーはいはいMETALLICAパクり過ぎだろ」と思ってそれまで、予習もまったくしていなければ観る気もあまりなかったTRIVIUM。しかしイントロに続く一曲目をしばらく聴いてそんな思いもどこぞへと消えた。とりあえずむやみにシャープな動きによる見事な頭扇風機を見せられただけで悶絶。
 音も思っていた以上に良くて、歌い方はMETALLICAっぽい部分が多くて曲もMETALLICA的なところがちらほら見られるけど、METALLICAというよりはそこから現在のメタルコアへと至るメタル音楽全体の美味しいところを取ってまとめている感じで、それそのものとして十分かっこいい。
 でもって演奏は派手で上手い、歌も上手い、ルックスもいいとくればこれは人気が出ないわけがないか。後でちょっと真面目に聴いてみるとしますよ。

BLIND GUARDIAN
 寝たり休んだりしていたおかげでまだまだ体力余ってますよというわけで、TRIVIUMがやってる最中に前方へとにじり寄る。ラウドパークの面子として発表された時には「へーそう」って感じだったのが、昔のアルバムとか引っ張り出してきて予習しているうちにすっかり楽しみになってしまったBLIND GUARDIAN。もう歌う気満々ですよ。
 で始まったわけですが、まずハンズィがベースを下げてないので面食らった。中途半端な位置に陣取ってしまったせいで前の人垣が邪魔でなかなかよく見えないのだが、何度見てもやっぱり持ってないし、ステージが進行してから持ってくるというような様子でもない。後ろの方で大人しく黙々と何か弾いてる人がいるけどあれひょっとしてサポートのベーシストか?
 最近の(というかここ何年か)の彼らのことってまるで知らないし、メンバーチェンジの経緯なんかも全然よくわかってないのだが、BLIND GUARDIANって今、少なくともライヴではハンズィはヴォーカル専任なのか。いつ頃からこうなんだろう。
 まあそれならそれで良いのだけど、しかしハンズィ、ベースを持ってないと妙に頼りなく見えた。手ぶら状態を持て余しているというか。服装も簡素だし、なんかこう威厳みたなものがまるで感じられない。なんか微妙。微妙といえばステージの背景も微妙。ロゴとか絵とかないなーと思っていたらプロジェクターか何かで変な動画が延々と映されているのだが、これが実にもう変な動画としか言いようのない映像で、曲と合っているとも思えないし訳がわからない。何なんだ一体。
 しかしまあ私の位置からはそもそもステージはものすごく見にくいのだし、シンガロングするにはこのパワフルな演奏と、唯一無二のハンズィの声さえあれば十分。「Born In A Mourning Hall」、「Script For My Requiem」、「Mirror, Mirror」、ああ大合唱気持ちいい。合唱パートのキーもだいたい歌って気持ちいい音域に設定されてるんだよな。上手いよな。

■HEAVEN AND HELL■
 一日目の最後を飾るのは去年に続いての登場となる、超人ヴォーカリストとして名高いディオ爺さん率いる再結成BLACK SABBATHもといHEAVEN AND HELL。
 いつの間にかステージの上は「HEAVEN & HELL」のジャケ絵をバックに古い屋敷だか城だかのセットが組まれていてびっくり。さすがヘッドライナーのひとつですわ。
 でこのステージ、去年も目撃済ではありますがディオ爺さんの衰えなさっぷりに驚きの連続。さすがっつーかもうどう考えても不死身でしょこの人。去年同様、さすがにご老体の体力を慮ってか長めのドラムソロやら長すぎるギターソロ(めちゃくちゃ上手いし聴き応えはあるんですけどね)やらが挟まれてはいたけど、そんなんなくても余裕で全部歌いきれるんじゃねーのっていうぐらい最後まで全然衰えないし、ギターやドラムとの掛け合いで無茶なシャウトしたりするし、終始きびきびと動き回りっぱなしだし、あれ人間じゃねーだろ。何歳だ。
 曲は去年と違ってSABBATHってことでメタル一色に統一されていたし、たいへん乗りやすく楽しめた。音質も今日出たバンドの中で一番良かったように思う。さすがはベテラン。アンコール込みの1時間半、時間もたっぷりでした。
 あとどうでもいいけど、トニー・アイオミとギーザー・バトラーっていくら見ても見分けつきませんよね。楽器持ってなきゃわかんねーです。誰か区別つくのあれ。

 さて、明日は「Mother North」で大合唱だ!


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KAMELOT with FIREWIND @ 渋谷・O-EAST

 開場時刻18時のところを18時に渋谷に着き、ラブホや風俗の派手な電飾看板がむやみに立ち並ぶイカス通りを抜けて会場へ。ちょっと遅れたなーと思ったが、はてそれにしては集まった人混みが動いていない。拡声器の声をよく聞いてみると、会場のセッティングがまだできておらず開場時間が押しているらしい。ナイス不手際!
 おかげでほぼ整理番号通りに入場、グッズは今回特に興味がないのでパスし、さっさとワンドリンクのビールをもらって最後方のPA卓前の柵にもたれかかる。いつも行くデスメタルやら何やらのライヴならとりあえず前方で騒ぎたくなる性分だけれども、今回に関してはやっぱりカーン様の歌とかいい音でじっくり聴きたいですよね。

■FIREWIND■
 定刻をいくらか過ぎたあたりでむやみに荘厳なイントロが鳴り響き、FIREWIND開始。彼らのことは去年のラウドパークでちらりと観ていたので一応初めてではないのだが、あの時感じたのと同様に非常に安定した演奏で聴かせてくれた。ガス・Gの男前な弾きっぷりは当然ながら見事。ツアー前にヴォーカルが脱退、METALIUMだか何だかの人が代わりを務めることになったそうだが、この人が急の代役と思えないほど何の違和感もなくはまっていて実に良かった。音もリズムも全然外さないし、最後までまるで声が衰えることなく歌い切るし、客あしらいも上手い。どちらかというとかっこいいというより愛嬌のあると言った方がしっくり来る風貌(侍と大書されたTシャツの下半分が縦横にぽっこり飛び出ていらっしゃる)だが、柔和な笑みを浮かべつつ堂々かつきびきびとした動きで観客を煽る姿はなかなか見栄えが良い。ドラマーもドラマーの割にというか、結構な目立ちたがりさんのようで、ドラム用のステージは妙に高めだし、いちいちスティック回しは決めるし、なにやら特注っぽい先っちょがビカビカ光る変なスティック使ってるし、振り子人形みたいに頭ぐらんぐらんさせながら楽しそうに叩くしで愉快。
 そんなわけで、前座のわりには長くたっぷり1時間余り、曲は全然知らないながらもかなり楽しめるライヴでした。結構いい曲も揃ってるしね。

KAMELOT
30分ほど置いて、本日のメインであるところのKAMELOT。前方の客は結構入れ替わるのかと思っていたらあまりそういった動きは観察されず、またFIREWINDの時には7割程度に見えた客入りがこの段階になってかなりぎっしりな状態に。やはり皆さん、FIREWINDよりはKAMELOTがお目当てらしい。
 逆光のスポットライトの中、仮面をしたマリア嬢(かな?)がステージ前方に進み出てヴァイオリン(「GHOST OPERA」アルバムのイントロ)を弾くという何とも劇的な演出でショウはスタート。注目のカーン様の声はアルバム通りの艶やかさで、たまに動くのに夢中になってか入るのが遅れたり、高音部ではさすがにフェイクしたりはするものの、細かい部分での声の抜き方とか、エロ過ぎる裏声とかその辺の表現がもうたまらん。彫りの深いミステリアスなお顔立ちも相俟って、KAMELOTの音楽そのものと直接通じる官能的なオーラを発していらっしゃる。笑顔がまたいいんだこれが。
 舞台上の演出が結構凝っていて、背景に「GHOST OPERA」のジャケット絵の馬鹿でかいパネル、少し手前にはアンプ類を隠すようにバンドのマークが描かれたパネルが2つ。スポットライトは普通に背後と上から照らすだけでなく、前方のわりと低い位置にも設えられたものを効果的に使っていた。またところどころで巨乳美女であるマリー嬢が出てきてカーンと絡んだりと、むやみにドラマティックなKAMELOTの音楽と良く噛み合ったステージになっていた。バラード2曲に各楽器のソロ・タイム(アルバムではあくまで楽曲本位というか、これ見よがしなプレイはほとんどしない彼らだが、これを聴くと全員かなりのテクニシャンであることがよくわかる)を上手い位置に入れた曲構成とか、フロントマンのカーンが暑いだろうし実際汗もだらっだらかいているにもかかわらず長袖の黒服を決して脱ごうとしないとか、その辺のこだわりもさりげなく効いていたり。
 少し残念だったのは演奏が前半やや走り気味だったのと、マリア嬢のヴォーカルが音量が小さくてかなり聞き取りづらかったこと。カーンの声に被せる時でも上手くハモれておらず、カーンの声の邪魔になっているだけと感じたこともままあった。でもまあ全体的には相当充実したいいものを見せてもらってお腹いっぱいだったことですよ。満足しきって帰りました。



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