OPETH JAPAN TOUR 2008 @ 赤坂BLITZ

 待ちに待ったOPETHの二年ぶり、二度目の来日公演に行ってきましたよ。前はラウドパークでたったの4曲だったけど今回は単独だ! ひゃっほう!

 個人的には確か2000年のHAUNTEDとIN FLAMES以来となる赤坂は再開発の結果浮ついたオシャレ感が漂う不愉快めの街になっていて、新しくなったBLITZの前にぎっしり犇めく黒Tシャツの群れがむんむんと違和感を演出、実に頼もしい。プレイガイドでとったチケットの整理番号は841番と遅めで、着いたのは開場ぎりぎりの18時だったが呼ばれるまではけっこう時間がある。まあ今回はプログレだし、どちらかといえば後方からおとなしく見ていたいので特に問題なし。
 15分ほどして番号が呼ばれ入場。物販はパス、ドリンクだけもらって客席へ入ると既に8割がた埋まっている。適当に後ろの方の真ん中あたりに突っ立ってぼけっと待つ。開演前のBGMにはずっと何かのプログレがかかっていて(ANEKDOTENだけわかりました)、いかにもというかもうそのまんまだな。
 開演10分前ぐらいになると会場のスタッフが何やら拡声器でアナウンスを入れ始めた。声は割れ気味の上BGMと混ざって何を言っているのやらさっぱりわからないが「うやくざば(お客様?)」だの「っぽばえーおずうび(一歩前へお進み?)」だのといった言葉がどうにか断片的に聞こえてきて、周りの観客がほんの少しずつだが前へ詰めたところを見るとどうやら「客席が満杯で入れない人がいるので前に詰めてください」といった意味のことを言っているらしい。と気付いて周りを見渡してみると本当に場内は完全に寿司詰めはいかないまでも全体的にその一歩手前の状態で、狭い入り口にまで人がぎっしり、後方であってもたとえば座り込んだりするような余裕はまるでない。BLITZという箱そのものが以前より小さくなっているらしいとはいえここまで大入りの会場を見るのも珍しく、OPETH人気の盛り上がりを窺わせる。

 ほぼ定刻に客電が落ち、バックドロップに描かれたOPETHの大きなロゴマークが一際ライトアップされると客のテンションは一気に上昇、手拍子と共に大きなOPETHコールが沸き起こる。私の位置はけっこう後方なのにもかかわらず私の周りも一斉に「オーペス!オーペス!」、釣られて私も唱和する。
 そして幕開けは新作からの「Heir Apparent」。始まった瞬間あまりの音の良さにびっくりした。音の分離も各楽器のバランスもCD通りじゃないかというぐらい理想的だし、音色はクリア、もちろん音圧も十分。私の位置取りがたまたまよかったというのも勿論あるだろうが、今までこんなに良好な音のライヴ観たことないと思ったほど。だいたい一曲目の初っ端から音がいいというのも珍しい。前座がいないから予め音をじっくり合わせられたということだろうけども、それにしたって観客がいたら音響変わるだろうし。あるいはこの新生BLITZという会場のおかげなのか。
 そんな良好すぎる音質の中、演奏の方も当然のように糞上手。静と動を自在に行き来する振幅の大きさがOPETHサウンドの主要な魅力の一つといえるが、激しいパートのアグレッシヴさ、静かなパートの繊細な情感ともに、高い演奏力のおかげで説得力十分。デス声にも普通声にも深みと艶があるミカエルのヴォーカルもそこに貢献している。また、場面転換に伴うブレイクの決まり具合やリズム・チェンジのスムーズさも半端ではない。たまにミカエルのギターが(ヴォーカルと兼任する忙しさからか)ちょっとずれていたぐらいか。
 セットリストはライヴを意識したものか、そこそこヘヴィ寄りの曲が多いように感じたが、そういった曲でもOPETHの場合少なからず静かなパートが入っているわけで、全体的には勢いで畳みかけるのではなくじっくり曲を聴かせることに重点を置いたパフォーマンスだった。動きも大してあるわけではないし(弾く姿はかっこよかったが。特にミカエルとペル)。メロデス/ゴシック勢の一部といった扱いだったのは登場時だけ、やはり根っこはプログレ・バンドということか。毎回曲が始まる前にチューニングをしっかりやるおかげで間が空いてしまうのもいかにもプログレっぽいが、そこはミカエルが意外と軽妙かつ愉快なMCで盛り上げてくれるおかげで間は保つ。
 観客の方も曲の合間ではミカエルの煽りに反応して盛り上がるものの、曲が始まるとすっかりプログレモード、たまに手拍子をしたり時折激しいパートで拳を上げたりするぐらいでいたって大人しく、ラウドパークの時のようなモッシュなどは望むべくもない。まあちょっと乗ろうと思ってもすぐ変拍子になるしな。
 とはいってもそもそも曲は良いし、音も演奏も素晴らしすぎたおかげで個人的にはまったく退屈はしなかった。「The Lotus Eater」「The Night and the Silent Water」「Deliverance」「Demon of the Fall」あたりの聴きたかった曲も聴けたし(そういえば「Deliverance」の最後のループの止めがピタッと決まってそのまま「Demon of the Fall」に繋がればこの上なく美しいと思ったのだけども、やっぱりチューニングで時間を食ってしまったのはしょうがないか)。「すげえ楽しい」とか「爽快」というのではないけれど、観終わった後の充実感といったらかなりのもの。余韻が恋しくて、帰って「THE ROUNDHOUSE TAPES」や「WATERSHED」をずっと聴いてます。

 あ、でも気になった点が二つだけあった。
・照明がむやみに客席を照らすのは眩しいのでやめてほしかったです。ステージを見ていられないこともしばしば。
・前にいたお兄さんの腋臭がとても気になりました。拳を上げるたびに香ってくるんです><
 以上!

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