ANEKDOTEN EVE @ 新宿 Motion

 ANEKDOTEN来日ばんざーいばんざーいということで、単独公演に先駆けてANEKDOTENに日本のアーティスト(どういう訳か知りませんが全部女性ヴォーカル)を3組ほどくっつけて4バンドで3000円(+ワンドリンク)、というお得イベントに行ってきましたよ。単独公演7000円なのに4バンドで3000円なんて鼻血噴くぐらいお得。

 場所は歌舞伎町の片隅にあるちっちゃいライヴハウス。開場時間の5分前ぐらいに着いて珍しくちょうどいい時間に着いたと喜んでみたら、開場時間・開演時間ともに30分遅れることになっただと。しょうがないので早めの晩飯など食ったりして時間つぶし。
 30分後に再び行ってみると、タイミングが良かったようで5番目ぐらいに入れ、おかげで最前に行くことができた。中は大変小さく(確かこのイベント150人限定だったかな)、ステージは本当に目の前で、柵があったらすぐステージ。マイクスタンドとの距離約1メートル、こんな至近距離で畑亜貴とかANEKDOTENとか観たらちびる。
 周りを見渡したら会場にいるのはいつものメタル人より一回りか二回りぐらい上の方々ばかり。考えてみればこれってワールドディスクの客層そのものだ。プログレッシヴだね!

■絵夢■
 今回出てくる4組のうち、最初の2組についてはまるで知らないので、どんなもんかと試聴モードに入る。まずは絵夢というおねえさんが一人で出てきてピアノ弾き語り。綺麗なピアノで始まったと思ったら、意外にハスキーなお声でいらっしゃる。
 ピアノも声も美しくてなかなか良いのだけど、歌詞の言葉選びが平板かつベタで、聴いていて少々恥ずかしいのが欠点といえば欠点か。曲に入る前に長々と歌詞の説明をするのも何かもやもやと恥ずかしい。まあベタだからこその直球勝負的な魅力は充分備えてはいるし、臭くも美しい歌メロと併せてメロスピにも通じる暑苦しい格好良さにもなっている気もする。シングルが出ているみたいなので買ってみてもいいかも。

■殻■
 お次は殻。本当はフルバンド編成らしいが、このイベントのためにヴォーカルとアコギの2人だけで登場。同じ女性ヴォーカルのアコースティック演奏でもさっきの絵夢さんとは打って変わって、透明感のある歌声と、霧を連想させるような浮遊感を持ったメロディで、その冷たく暗いぼんやり感が実に心地良い。バンド編成でやればこれ、そのまんまゴシックメタルだったりするのかしら。これはかっこいい。ディスクユニオンとかにCD売ってるかな。

■死蝋月比古■
 3番目は死蝋月比古、ヴォーカルにヴァイオリンとピアノの3人編成。準備の時、ヒラッヒラの舞台衣装で畑さんが出てきて「やっべこんな至近距離で生畑亜貴だ」とか思ってたら畑さん、「うわっスタンディングなんだ?」「緊張してきたー」などと口走るのでこちらは大いに和む。
 しばらくして演奏開始。1曲目、「月比古じゃないけど聞き覚えが……?」と思ったら、これはなんとANEKDOTENの「Sad Rain」! 短いけど日本語歌詞までついていて、なんというかANEKDOTENへの敬意の表しっぷりに感激する。その後の曲間のMCでも「憧れのANEKDOTENの前座で緊張してます」とか「ANEKDOTENのボックスセット買いましょうね! 私は取り置きしました」といったことを嬉しそうに言っていて、そういうミーハーっぷりを見ているとこちらも何かすごく嬉しくなる。それがなくても畑さんずいぶん腰が低くかつ面白い人で、いろいろと笑わせてもらいました。
 肝心の演奏の方も勿論素晴らしい。アルバムで聴く月比古の曲というのはまあ基本的には好きなんだけれども、フルバンドで鳴っているパートの音がメタル耳にはどうにもショボく(昔から日本のプログレって何故かこういう音ありがちですよね。低予算なのか好みなのか知りませんが)、線の細いヴォーカルとも合わずかなりチープに聞こえる場面が結構あってそこが不満なわけです。しかしこうしてアコースティックの3人編成で聴いてみると、音の隙間が前提となることが却っていい感じに。特に生ヴァイオリンの美しさは格別、これで聴く「メソポタミア」とか実に感動的です。目まぐるしい「ゴブラン」なんかもアルバムで聴くとかなり妙ちきりんな曲だけど、生で観ればむやみに楽しそうな畑さんの様子も相俟ってずいぶんと愉快な曲になってました。
 終わり際には床の荷物を片づけながら我々最前の客に「どもども」などと挨拶してくれ、その笑顔に心はすっかり畑さんの虜。

ANEKDOTEN
 いよいよ大トリANEKDOTEN、前の3組はアコースティックだったがここだけは4人のフルバンド。どうでもいいけどメンバー数が1〜4人と順次増えていて面白いね!
 人数が増えたのと急にでかい白人がのしのし出てきたので、狭いステージが余計に窮屈に。ああ、すぐそこにANEKDOTENが! そして特にたいした前置きもなく、さりげなく始まる演奏。
 フルバンドになってさっきまでより音がでかくなったということもあって、単純に音圧に圧倒される。そして本当に目の前、手を伸ばせば届くほどのところで演奏しているという事実。あの畑さんが見せたANEKDOTENに対する思い入れぶりもあって、感動はさらに倍増。
 曲は新旧満遍なくやってくれたが、やはり生で聴いて圧巻だったのは1st〜2ndの頃の曲だった。変拍子が暗くヘヴィに迫ってくる迫力は本当に凄い。メロディを前面に打ち出した近作の曲も何かこう包み込まれるような感じで勿論良いのだけど、多くの場面で主旋律を担うキーボードが聞こえにくかったのが残念。そこを除けば音はなかなか良好だったのだが。
 場所自体が狭いのでステージングについてはよくわからなかったが、まあ私の場合は完全にかぶりつきで見られたのでそれだけでお腹一杯。ただまあギターヴォーカルの二クラスは見た目も頼りないし立ち居振る舞いもなんだかふらふらしていて、もうちょっとどうにかならんのかとは思ったけど。でもそんな様子を見ることができたのも含めて良かったです。1時間半ぐらいたっぷりやってくれたし。

 終演後後ろを見ると、前座の出演者の皆様もしっかりANEKDOTENを一緒に御覧になっていた模様。さらに一息ついたANEKDOTENのメンバーもすぐに客席の方に出てきて、観客・メンバー入り交じって和やかに歓談モード。いろいろ準備してきたものにサインしてもらっている人なんかもいたり。まあ私はサインしてもらうような道具も持ってないし、持っていたとしても話しかける根性はないので、Tシャツを買った後はそんな幸福な光景を尻目にさっさと退散しましたとさ。いや、いいイベントでした。アコースティックということもあって入れ替えが早いのも良かった。

 というわけで次は13日の単独公演です。ありがちだけど「Sad Rain」聴きたいぞ。月比古ヴァージョンは今日聴けたけど。


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