EXTREME THE DOJO vol. 20 @ 新木場・STUDIO COAST

 第20回記念スペシャルということで、ただでさえいつも素敵な面子を呼んでくれるDOJOが今回はさらに大変なことになっております。その分チケットもややお高くなっておりますがラインナップの豪華さに比べれば何ほどのこともありませんということで行ってきましたよ。

 開場の15分ばかり前というちょうど良い時間に到着。今回のチケットはA・B区分で、私のチケットはBなのでAが全部呼ばれるまで待たされる。そうしたらAだけで実に900番台まであってさすがに今回は入りが違うなとびっくり。いつものクアトロとかなら到底入りきらないところだが、そこは広ーいスタジオコーストなので余裕。
 物販は男並びに並ぶというかもう鬼のように並びっぱなしだったのでパスして場内へ。入ってみると人はだいたい後ろの方に陣取っていて前は比較的空き気味。真ん中へんの縦になっている柵に凭れるようにして待機する。

■INTO ETERNITY■
 一発目はカナダのメロディックプログレッシヴ・デス・バンドINTO ETERNITY。どうでもいいけど演奏時間の割り当ては30分でオマケ的な扱いかと思っていたら、しっかりロゴの垂れ幕なんかも用意されていてちょっと感心した。
 一応アルバムは二枚ばかり持っているのだけれど、予習はMAYHEMやらAT THE GATESを優先してしまいこのバンドに関しては全くしておらず、曲もほとんど忘れているという体たらく。しかしステージが始まってみるとこれが存外に良くてびっくりした。このバンドの曲は10何秒とかごとにスタスタ〜ゆったりパート〜ブラスト疾走デス声みたいな急転直下な展開を繰り返して聴いてるこっちとしては乗りにくいことこの上ないんだけれども、それを一度の破綻もなく弾きこなすのがまさに絵に描いたような緩急自在っぷりで凄い。中でもピロピロピロピロと間断なく速弾きしているリードギター(トーンも綺麗)、それに30分という短い尺ながらクソ高い金切り声から迫力あるデス声まで、声を嗄らすことなくしっかり出しきったヴォーカルには目を瞠らされた。それぐらいテクニカルなことをやっていながらサービス精神も旺盛、全員がよく動き回っていて、特にヴォーカルは威厳とか貫禄とかとは無縁ながらお茶目で楽しい。他のメンバーの首にシールド巻き付けて頭に噛みついてみたりとか。そこまで知名度の高いバンドでもないと思うが、パフォーマンスの良さからか客席は随分盛り上がっていた。どうせ楽器オタクみたいな青臭いのがピロピロしてるだけだろ?的な色眼鏡で見ていたことを反省。

■PIG DESTROYER■
 お次はPIG DESTROYER。ベースレスにギターも一本ながら気色の悪いSEを効果的に使い、上手い演奏、汚いヴォーカルも相俟って十分なブルータリティを演出。メンバーはあまり動かず、基本的にヴォーカルが汗を垂らしながらうろうろしているぐらいだが、観客はグラインドコアらしく勝手に巨大なモッシュピットを作ってぐるんぐるん盛り上がっている。モッシュに加わらない私にしてもステージをちゃんと見ているような余裕はなく、襲いかかってくる人波を捌くので手一杯。でも痛いけど楽しいです。

■MAYHEM■
 PIG DESTROYERが終わってついに我が本命MAYHEMということで、そそくさと前方へ移動。準備中、中央マイクスタンドのところに地球儀の載った台が運ばれてきて、いかにもMAYHEMな感じに思わず客席からは「MAYHEM! MAYHEM!」とコールが湧き起こる。さらに地球儀の両脇に設置された蝋燭に火が点され、そして前面にあった布が取り払われて豚の生首が登場するに及び、一段と高まる客席の盛り上がり。
 やや念入りなサウンドチェックの後、いよいよMAYHEMのステージが開始。くちゃくちゃのローブだかマントみたいなのを被ったアッティラ様、顔は常に逆光になっていてよくわからないがその格好はいかにも邪教の神官とでもいった風情。呪詛のような禍々しい声で歌いながら地球儀と豚の首の周りを歩き回り、ナイフで豚を弄ぶ、地球儀に水を掛ける、蝋燭の火に手を翳すといった気色の悪い動きで、存在感は十分過ぎるほど。正面に据えられた地球儀の台のせいで私の位置からはドラムセットの裏にいるはずのヘルハマーの姿がまったく見えなくなっており、セッティングの時には位置取りを失敗したかなとちらりと思ったものだったが、いざ始まってみるとアッティラ様から目が離せず、結果的にはどちらでも良かったか。
 選曲にしても新作を中心におどろおどろしい曲が多く、初めて生で耳にしたヘルハマーのドラムは当然感動的な凄まじさであるものの(機銃掃射か?というのが全く誇張でないぐらいの速さと正確さ)、全体的には厳粛で陰鬱なムードこそが支配的。ただならぬ妖気が終始場内に渦巻いていて、雰囲気はまんま何かの怪しげな祭祀空間です。
 観客の方も、最初こそあのMAYHEMを初めて目撃する感動からか物凄い前方人口密度並びに圧力を記録していたが、次第にこの乗りようのない真っ黒な空気に飲み込まれてただ立ち尽くすのみに。
 と思っていたら、後半になって旧作から速い曲が数曲プレイされる。ヘルハマーのシャープきわまりないドラミングはここにきてその凄みを存分に発揮、いやあさすがにすげえ。

DILLINGER ESCAPE PLAN
 MAYHEMが終わったので一旦ロビーに出てドリンクチケットを引き替える。押しくら饅頭の後のビールうめえ。そして後方からDILLINGER ESCAPE PLANを鑑賞。
 メンバー全員が日の丸に「日本」だの「一番」だのと書かれた鉢巻を巻いてステージに出てきて、うわバカみてえとひとしきり笑う。しかしパフォーマンスはそれに似合わぬ凄まじさ、ハードコアらしくガタイの良いメンバーたち全員がのっけからブラスト・ビートに乗ってステージ狭しと暴れっぱなし。動きがやたら派手なものだから見た目には演奏はラフそうなのだが音は全然そうじゃないのが凄い。

■AT THE GATES■
 トリは最近流行の期間限定再集結の流れに乗って来日してくれたAT THE GATES。テクがものすごいわけでも何かギミックが用意されているわけでもないいたって地味なショウだが、終始安定しきったプレイと曲そのものの良さで大物らしい貫禄に溢れており、非常に心地よく乗れた。フロントマンのトマス・リンドベルグも笑顔の素敵な以外と健康そうなお兄さんで、何となくイメージと違うけれどもかっこいい。
 私は「SLAUGHTER OF THE SOUL」とあとはベスト盤的な「SUICIDAL FINAL ART」ぐらいしか持っておらず、それらに関してもさほど聴き込んでもいないきわめてゆるゆるのリスナーだが、鋭くかつフックに富んだ曲の数々には思わず一緒に盛り上がらずにはいられない。正直なところ、多くのスウェーデン人アーティストが手放しで絶賛する「SLAUGHTER〜」は一曲目こそ問答無用にかっこいいものの他はそこまで言うほど凄いアルバムとは思っていなくて、皆が口を揃えて名盤名盤というのも歴史的な意味合いなのかなぐらいに考えていたのだが、それがまさかこれほどライヴ映えする曲揃いだったとは。実際、まったく知らない「SLAUGUTER〜」以外のアルバムからの曲に関してもまったく問題なく乗れるぐらいにキャッチーだったし、なるほど伝説と崇められるのも頷ける。
 アンコールでは一曲目に皆さんお待ちかね、例の「Blinded By Fear」が演奏され、何人ものサーファーが頭上を転がる大変な状態に。顔は蹴られるわ後頭部に肘は喰らうわでとても痛いんだけど楽しいです。HAUNTEDの初来日で聴いたときもそりゃあもう感激したけど、今回こそは正真正銘の本物。あー、たまらん。

 というわけでみんなそれぞれ最高だったね! 長丁場で観客もよく頑張った。そうそう、サウンドも全バンド押し並べて良かったです。もうDOJO良い仕事しすぎ。


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