LOUD PARK 06 @ 幕張メッセ・2日目

■AS I LAY DYING■
 最低限WITHIN TEMPTATIONに間に合えばいいやと少しばかり寝坊し、開演20分後ぐらいにメッセに到着するとAS I LAY DYINGが絶賛演奏中。メロデス系のメタルコアの中でも一際メロデス度が高いというか、クリーン・ヴォーカルのパートにも他のアメリカ勢によくあるようなポップな甘さがなく、あくまでメタル然としているのがいいね。

■BLOODSIMPLE■
 そのまま前方に進んで次のWITHIN TEMPTATIONのために場所を確保、斜めからBLOODSIMPLEをモニターで鑑賞。ヴォーカルが最初鬼の面なんて被ってるから何かと思った。一貫してブルータルでありながら、時折テクニカルでメロディアスなギターが挟み込まれていいフックになっている。またヴォーカルの声質、表現力ともに凄い。

WITHIN TEMPTATION
 お目当てのWITHIN TEMPTATIONシャロン嬢目当てに野郎共が密集してきてまったく暑苦しいことこの上なく、また昨日のOPETHみたいことになるのかと思ったが、さすがに音楽性のせいかステージが始まってもそうはならず、圧力はそれなりにあるものの観客のお行儀は実に良く快適に観られた。まああの曲でモッシュはできんわな。
 これだけブルータルなバンドがひしめき合っている中で一際の優美さを備えた、言ってみれば軟弱な音楽であるだけに、他と比べて聴き劣りがするんじゃないかと少し心配だったのだが、全くそういうことはなかった。白いドレスを着たシャロン嬢はその格好で髪を振り乱してヘッドバンギング、メタル姐ちゃんぶりをアピール。あちらでは相当な人気バンドであるだけに、客の煽りっぷりも大したものである。演奏の方も、キーボードを駆使して壮大な曲の数々をきっちり再現、荘厳さとアクティヴさの両面で自分たちの魅力を充分に表現してみせた。アルバムではその声の細さから煌びやかなサウンドに埋もれがちな印象のあるシャロンのヴォーカルも力強く堂々としたもので、単に音のバランスの問題なのか、もしくは生歌の魅力というやつなのかは知らないが、アルバムで細く聞こえるのは単に声質の問題に過ぎないのだということがよくわかった。ライヴではむしろその声質の儚げな空気が曲の魅力を増幅 しているように感じた。
 また、シャロン、ロバートともに、お決まりの「ドモアリガト」だけでなく日本語をよく覚えてきてくれているのが好印象だった。出てきたときに「はじめまして、WITHIN TEMPTATIONです」と言って笑ったシャロンは実にキュート。ロバートも途中「みんないっしょに!」と客に歌わせたりとか。イントネーションや発音もやけに流暢で、このために結構練習もしたのだろうなというのが窺え、その真摯な態度に好感度は鰻登りである。

LAMB OF GOD
 次はLAMB OF GODを後ろの方から観戦。パワフルきわまりないドラムにむやみに切れ味の鋭いギターが載る様は極めてブルータルで、どうしようもなくかっこいい。ぴょんぴょん跳ね回るヴォーカルの攻撃的なパフォーマンスは3月に観たTHE HAUNTEDのピーター・ドルヴィングを思わせるド迫力。当然ながら客席は相当な盛り上がりで、後方からは確認できなかったものの噂の「Wall of Death」もしっかり発生したらしいですね。日本人らしいソフトな仕様で。

COCOBAT
 飯を食った後COCOBAT。今日後半のIN FLAMES〜SLAYER用6時間半立ちっぱなし地獄に備え、体力温存のため後方で座り観。昔IN FLAMESの前座で観たっきりだがいい音を出してるな。むやみに躍動感のあるベースが実にエロい。客の隙間から時折覗くTake-shitさんのうねうね動く引き締まった上半身もエロい。

MASTODON
 MASTODONは前方の隅で半分寝ながら観戦。フレーズひとつひとつはキャッチーでわかりやすいながら変拍子満載の複雑なプログレは乗りにくいのか、真ん中で立って観ていた観客の中にも特に目立った動きは見られず、全体的に茫然と眺めている感じだった。DojoのときのNILEと同じような状態か。演奏力はかなりのもので、訳のわからない変拍子を余裕でこなす傍ら手数の多いフレーズを叩き出すドラムは特に凄い。

■HATEBREED■
 MASTODONの客が捌けたところで客席前方右側の真ん中あたりに潜入、隣のHATEBREEDをモニターで観る。やたらアグレッシヴでかっこいいんですが、ヴォーカルの人結構リズムに乗り遅れてません?というのが気になった。

IN FLAMES
 ここからラストまで前方キープで参戦、まずはIN FLAMES。さすがにこのバンドはえらい人気で、私のいた前から8列目あたりではものすごい圧力で押されまくる上に常に左右に揺れるので大変。4曲目ぐらいまでは楽しかったが、だんだん酸欠になってやばい状態に。押されて倒れないように常に全身を緊張させつつとにかく顎を上げて酸素を吸入するのに必死、その様はまさに水槽の金魚のようだったことだろう。MCもほとんどしないので休憩もあまりできない。一応セットリストはちゃんと遅い曲がところどころに配置されて緩急がついていたが、客の群れはそれでも関係なく動くので辛さにはまるで変化がない。
 演奏自体は良くて、過去に何度か観たときとは比べものにならないぐらいタイトになっていて、「TOKYO SHOWDOWN」のような危うさは感じられなかった。音のバランスも彼らにしてはかなり良く、昔はしょっちゅうあった「これ何て曲だったっけなあ」というのもなかった。
 ところでこのLOUD PARKフェス、全体的に音が悪かったという意見をよく見かけるが、そういう意見の少なからぬ部分は後ろで観ていたせいだったんじゃないかと個人的には思う。自分の今回の観戦経験から言えば、後ろの方で観たものに関してはだいたい音が潰れたり割れたりしていたし、逆に前の方で観たバンドはおおむねそれなりに音は良かった。普通のライヴハウスと比べればめちゃくちゃでかい会場だから、後ろの方は反響がひどくてグシャグシャになるのは当然だ。加えてステージ前のスペースもかなり広く取ってあるため、通常サイズのライヴハウスでは音質的にベストポジションとなる位置がLOUD PARKではちょうど最前付近になり、後ろに下がれば下がるほど音は悪くなる一方。したがって、「暴れたければ前、良い音で聴きたければ後ろ」というパターンが通用せず、暴れたくても音を聴きたくても前に行くしかないわけである。
 でまあIN FLAMESのお話。演奏は良かったのだが選曲にはやや難ありというか、日本で人気が高く、実際来日公演ではよく演奏するはずの「Episode 666」や「Embody The Invisible」「Moonshield」といった曲をやらず、ほとんどが最近のモダン化した曲で占められていた。初期のいかにもなメロデス曲というと「Jotun」ぐらいか。後で聞くとどうやら「Graveland」をやったらしいが、そのときはちょうど意識が朦朧としていたのかまるで記憶にない。もったいねー! でもその辺の珍しい曲やるなら他にやるべき曲があるだろうに。「December Flower」とか「Dead Eternity」とかさ。まあ良い曲の馬鹿に多いバンドで、あれもこれも拾うのは最初から無理だとは思うし、モダンな曲中心になるのも市場を考えれば仕方のないことかもしれないが、前2作からの曲をやるぐらいなら新作からもっと聴きたかったとは思う。しかしその新作からの「Take This Life」「Come Clarity」は本当に良かった。「Come Clarity」のサビを歌わないアンダースには「?」と思ったが。
 あと視覚的なパフォーマンスに関しては、前方の客で視界がほとんど遮られていたのと酸欠で魚と化していたせいで全く観ている余裕がありませんでした。もったいねー!

KILLSWITCH ENGAGE
 IN FLAMESが終了しようやくまともな酸素濃度の空気が吸えて一安心。IN FLAMESの最中はもう駄目もう死ぬSLAYERなんて前で観ようとせずにとっとと離脱しようと思っていたが、酸欠状態さえ抜け出せば体力自体はまだまだ残っており、これならいけると判断してさらに前へとにじり寄った。でスクリーンでKILLSWITCH ENGAGEを眺める。1曲目が始まった途端、うわー直後に聴くとほんとにそのまんまIN FLAMESだなと思ったが、歌はIN FLAMESより遙かに上手い。アンダースと取っ替えたら完璧なのにな。もともとシンガロング・パートはポップめなところがあるし、漫才みたいで気が抜けるMCもあって、勢いよりは曲の良さで聴かせる感じか。

CHILDREN OF BODOM
 そしてCHILDREN OF BODOM。始まる前に酔っ払ったみたいな変な外人のおっさんがふらふらと出て来て「これからKING DIAMONDが出るよ! KING DIAMOND! KING DIAMOND!」と客を煽っていたが、当然何のことかさっぱりわからず客達は茫然。意味がわからないなりにちょっと面白かったけど何だあれは。フィニッシュ・ジョーク?は難解です。
 さて、いつものようにアホなパーティーSEに導かれて登場した彼ら、「Silent Night, Bodom Night」「Needled 24/7」と名曲を立て続けに2連発。さらに最新作の中でも乗りやすい「Living Dead Beat」に「Are You Dead Yet?」と畳み掛けて飛ばしまくる。ミドル・テンポの曲を少し挟み込んで「Hate Me!」に「Bodom Beach Terror」、さらに2ndから彼らの名を冠した「Children Of Bodom」! この曲って人気はすごいけどなかなかやらないんではなかったか? 私は観たことがない気がする。「Everytime I Die」で少しばかり客を落ち着けた後は「In Your Face」にお決まりの「Downfall」で締め。いつものようにテンションの全く落ちないステージで、アレキシの華麗なステージングはとにかくかっこいい。
 ただちょっと音のバランスが良くなくて、ドラムはやたら大きいのにギターが聞こえづらかったりした。あと、特に前半演奏が噛み合ってないところが多くて、ドラムとヴォーカルが突っ走りながらどんどんずれていったり、決めるべきところで決まらなかったりするぐだぐだ具合が残念だった。最後数曲ではそういうことはなくなったが。いつもは全くこんなことはないと思うんだけど、モニタースピーカーの調子でも悪かったのかな。

■眼鏡紛失■
 CHILDREN OF BODOMが終わってさらに前へ、と思ったらジーパンのポケットに差しておいた眼鏡ケースがなくなっているのに気づいた。眼鏡ケースの端を出して引っかけるようにしていたペットボトル入りのビニールの手提げ袋(かなり間抜けな格好だろうがどうせ見えるわけがないんだから気にしない。でもまあやっぱりカーゴパンツぐらいは用意するべきだったな)はすぐ足下に落ちていて、水分補給はとりあえずできたが、眼鏡がなかなか見つからない。まあ一応ハードケースに入っているし、少々踏まれても大丈夫、後で探すか…と一旦諦めた。しかししばらく観客の動きがあった後で周りを見ると2人隣ぐらいの床にケース発見! 隣のお兄さんに頼んで拾ってもらった。ケースは大きく凹んでいて、これだと眼鏡も駄目かと思ったが、開けてみると眼鏡は無傷。かけてみたらフレームの歪み特になし。ある時はペットボトルを引っかけるための最適な棒となり、またある時は中の眼鏡をその身を犠牲に完全防護。まさにケースGJ! 購入時に付いてきたタダの眼鏡ケースだが、最高の働きをしてくれた。まじリスペクト。
 それにしてもこのあたりの区画はペットボトルやら誰かのタオルやら靴やら上着やらがむやみに散乱していて、いかに過酷な環境かがよくわかる。これらの散らかった状況はまた危険度を上げることにもなっていて、ライヴ中に動こうとしたら足が引っかかるし、それに文字通り足の踏み場が全くなくて困り、「どうせペットボトルか何かだろ」と思って足を載せたら誰かの足だったり、逆に他の人に平気で足に乗られたりもした。足全体に乗られるのだったら特に痛くもなんともないので別にいいのだが、親指一本とかに体重をかけられるとかなり痛い。

DIO
 最後から2番目は生ける様式美伝説DIO。話にだけは聞いていたがものすごい爺さんで、既に60を越えているにもかかわらずその声、体ともに全く衰えを見せていない。噂通りどんな曲でも決してフェイクせずしっかりシャウト、終始見せるきびきびしたシャープな動きもかっこいい。年齢からは到底信じられないパフォーマンスだ。本当は10万とんで60いくつとかなんじゃなかろうか。この御方がメタル界に採り入れたというお馴染みメロイック・サインも、手拍子とメロイック・サインを組み合わせ、どこの町内会の夏祭りかと思わせる斬新な活用法を見出しており、その飽くなき探求心にも感動させられた。
 曲は知らないのが多かったが、最後の方で「Kill The King」や「Heaven & Hell」が聴けたのは嬉しかった。近くの人が「本家ヴァージョンのKill The King初めて聴いた」と言って喜んでいたが、考えてみたら私もそうかも。
 IN FLAMESCHILDREN OF BODOMらが、短い時間で出来る限り自身をアピールしようとしてかMCほとんどなしで突っ走る中、このバンドはMCもしっかりする上に各パートのソロ・タイムを設けていてくれたのも実に良かった。特にキーボードとドラムが意外な演出をして大いに楽しませてくれ、全く退屈しない良い休憩時間になった。

■SLAYER■
 そして大トリ、帝王SLAYER! 最初の曲から盛り上がりっぱなしの観衆、前から2番目という私の位置はぎちぎちのため左右にはあまり動かないのだが、とにかく胸が押される押される。また名曲ばっかりやるものだから毎回サーファーの数がすごいことになっていて、1曲に数人という割合で頭上を転がっていくサーファーをやり過ごすのが大変。とはいえ、私の目の前にいた巨大外人さんがその頼もしい背中で圧力を柔らかく受け止めて、またサーファーの猛攻も緩和してくれてありがたかった。ここなら空気の通りもいいし、IN FLAMESのときの恐怖酸欠地獄に比べれば何てこともないね。
 CATHEDRALのときと同じく、大した動きは見せないにもかかわらず演奏しているだけで瘴気のようなオーラを放って何だかわからないけどかっこいいのはさすが帝王の威厳。俯いて無茶な高速でダウンピッキングを繰り返している肉塊のようなケリーが正面に見えてちびりそうな具合。数曲ごとになぜかバンド全員が後方に引っ込み、その度に照明がいちいち落ちるのだが、それでも些かも冷める様子のない聴衆の騒ぎっぷりも凄い。
 セットリストにやや不満のある人もいたようだが、私はそもそも生帝王は初めてなので、「South Of Heaven」や「Chemical Warfare」、「Raining Blood」、「Dead Skin Mask」、「War Ensemble」、さらに「Cult」といった大好きな名曲の数々が生の迫力で聴けて最高に満足だった。トムもわりかしちゃんと歌ってたし。帝王はやっぱすげえ!

■終演■
 この大会、始まる前はMINISTRYやKORPIKLAANIがキャンセルしたり、ブラックメタルも純デスも一組も呼ばないわりになぜかヴィジュアル系やコピバンなんかを呼んでみたりといった点で残念がられたりもしていたが、いざ始まってみるとごく一部を除けば若手からベテランまでしっかりした実力のあるバンドばかりで、どのステージも大いに楽しめるいいイベントだった。あの客入りなら商業的に見てもかなりの成功の部類に入るんじゃなかろうか。どうやら来年もやる気満々でいるようなので、是非実現させてもらいたい。今度はブラックメタル込みで!
 しかしこんなに疲れたことも珍しい。HATEBREED以降の6時間半立ちっぱなし、まあどのバンドもプレイ時間短いから大丈夫だろ、と考えていたが、逆に短いからほとんどのバンドがMCとかを入れずにやっていて、休憩ができない分厳しかったような気がする。でも最前の激戦区でよく耐えた、俺!
 また終演後の滝汗っぷりがすごくてね。一応汗に備えて着替えのTシャツを持ち、上着と一緒に腰に巻いていたのだが、これも一緒にぐっしょり濡れてしまっていてとても着用に堪えるものではなさそう。上着もTシャツも、もとのTシャツの汗取りぐらいの意味しかなかった。やむなくMTVの物販コーナーでTシャツを1枚購入。こんなことならやっぱり無理せずコインロッカーに入れてくるんだった。しかし新しいTシャツを着た途端にむちゃくちゃ体が軽くなってびっくりですよ。汗を吸いに吸った3枚の服は新しいTシャツの入っていた袋に放り込んだが、これがまためちゃくちゃ重くてキモい。
 そして昼飯の時以外今日はずっと離れていた友人らと合流、今日の思い出を口々に語り合いながら歌舞伎町まで出て行って酒を飲みながら朝までメタルカラオケ。「Ride The Sky!」「We Are The Youth Gone Wild!」「Kick Your Ass! MANOWAR Kill!」「メッタルハート!」と全員が合唱できるカラオケなんて楽しすぎる。3月のDojoのときと同じく最高の2日間でした。We Rock!


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