LOUD PARK 06 @ 幕張メッセ・1日目

■入場■
 朝、海浜幕張駅にて知人と合流、人の流れに従ってメッセへ。着くと入場の列はかなりの長蛇っぷりで、開演40分前に並び始めたのだが中に入れたのは結構ぎりぎりだった。

■FLYLEAF■
 まずは物販、と皆で並ぼうとするが物凄い行列。あまりの人数に恐れをなした私が「こんなところに並ぶよりFLYLEAFが観たいです」と申し出たところ受け入れられ、ステージへ取って返す。
 このバンド、もともとあまり観る気がなく事前のチェックもしていなかったが、ステージへ向かう途中で聞こえてきた音に直感、「やばい、これはいい」。ミドル・テンポ主体のヘヴィでモダンなサウンドに乗るのは清純な女性ヴォーカル、ということで普通にゴシック・メタルと呼んで差し支えない感じ。もっと言えばEVANESCENCEのフォロワーにも当たるか。いかにも新人という感じでパフォーマンスは貫禄などとは程遠いが、しかしその分ヴォーカルと弦楽器隊が常にステージ中を跳びはねていて見栄えそのものはそれなりにするし、視覚を楽しませようと必死な姿は微笑ましくもある。ヴォーカルのルックス(特に貧乳具合)も実に良い。曲もなかなかで、ヴォーカルやギターが時折発散する哀愁には結構ぐっとくる。ヴォーカルの歌唱力も申し分なく、ところどころで発するデス声も堂に入ったもの。これは思いがけなくいいものを観た。あとでCD買わねば。

■ANVIL■
 FLYLEAF終了後、そのままステージを離れずに前の方に行き(この後のOPETHのため)、そこから隣のステージのANVILを観る。四半世紀以上のキャリアを誇るパワー・メタルのベテラン、ということで音はそのまんまの馬鹿一直線なパワー・メタル。ヴォーカルのおっさん歌うとき目見開いてて顔こえー。しかも声出てねー。しかしさすがベテラン、客の扱いは慣れたもので、「メタルは世界最高の音楽だぜ!」とか適当なことを言って無理矢理観客を乗せる。そしてわかり易い曲で「METAL on METAL!」とか何とかコール&レスポンスで大盛り上がり。横で見ててもめちゃくちゃ楽しい。頭悪い音楽の強さっていうのはあるね。

OPETH
 そして個人的本大会の目玉のひとつOPETH。新作を機にブルルンその他でさんざん人気を煽られたせいもあって寄せられる期待は物凄いものらしく、開始前から皆全力で手拍子OPETHコール。背後から押し寄せる観衆圧の高まりに恐怖を感じる。そして始まった1曲目は新作からヘヴィな「Grand Conjuration」。一筋縄ではいかないビートのはずだが、観客おかまいなしに乗りまくり。基本プログレ・バンドのはずなのにモッシュはするわサーフィンはするわで大騒ぎ。私などサーファーから顔面に肘鉄喰らった。痛え。OPETH前に眼鏡外しといて良かった。2曲目はアコースティック・アルバム「DAMNATION」の「Windowpane」、さすがにこの曲では観客も落ち着いた。それにしてもOPETH、素晴らしいステージです。完璧な演奏とサウンド(ドラムとギターの音が本当に美しい)でアルバムの深遠な雰囲気を余すところなく伝えており、デス、ノーマル声ともに深く心地よいヴォーカルも見事。3曲目は「Damnation」、最後の複雑なフレーズを執拗に繰り返すパートがミソの曲だが、ライヴでもしっかり再現、ぐるぐると酩酊感が心地よい。で、「ロマンティックなロック・ソングだ」とのMCとともにプレゼントされた最後の4曲目(予想通り曲数少ねー)は意外なことに3rd「MY ARMS, YOUR HEARSE」から「Demon of the Fall」! 懐かしい! ストレートなデス・メタル・パートを多めに含むこの曲には観客も再び盛り上がるかと思ったが、古めのアルバムからでチェックが行き届いてないのか、それとも1曲目の盛り上がりだけで疲れ果てたか、とくに心配には及ばなかった。

■物販■
 OPETHの最高のステージにすっかり満足、「もうこれで帰っても別にいいやー」な心境で今度こそ物販へ。相変わらずの人混みを延々1時間並ばされる。LOUD PARKオフィシャルのTシャツがショボいとしか言いようがない出来であることは事前に確認済なので、狙いはバンドTシャツ。SLAYERとMEGADETHのデザインがもう馬鹿みたいにヘボくて、その昭和のテイスト溢れるケバくも安っぽいセンスにひとしきり笑う。私は結局デザインが良かったFLYLEAFとBLACK DAHLIA MURDERのTシャツを購入。どっちもCD持ってねえんだけどな。まあFLYLEAFはさっき聴いて音が気に入ったし。

DISSECTIONのTシャツが外人さんに人気■
 物販に並んでたら前の方に並んでた外人さんが私のTシャツを指差して「DISSECTION! Yeah!」みたいなことを言ってきたのでイエーとか何とか適当に笑顔で返した(ちなみにその外人さん自身、「R.I.P. Dimebag Darrell」という最高のTシャツを着てた)。この間のダートラのライヴでもDISSECTIONのTシャツを着てたら外人さんに同じようなことを言われたな。つうか同一人物だったりして。
 でも今日DISSECTIONのTシャツ着てる人、私以外に誰も見かけませんでした。GORGOROTHは3人ぐらい見たのに!

■DRAGONFORCEと飯■
 物販に立ちっぱなしで並んだ1時間がOPETHのライヴ以上に脚に堪え、また腹も減ってきたので、DRAGONFORCEのライヴ(1時間も並んだせいでこの時点で20分ほども見逃していた)は1分ほど後ろから観るだけで切り捨て。ハイトーン声の出てなさが熱い! で、飯。ロシア料理の屋台で挽肉ご飯みたいなのを食う。美味しいが量が足りなかったので、ついでに串焼きも食った。肉うめー。

■CATHEDRAL■
 腹も膨れて次はCATHEDRAL。初期のいかにもドゥームなヘヴィ曲ではなくおおむねHRを基調としたノリのいい曲中心のセットリストで会場は大いに盛り上がる。「Hopkins」かっこいいなあ。それにつけても凄いのはリー・ドリアン先生の異常な格好良さよ。ドリアン先生だけでなく皆これといって大した動きは見せず、たまにドリアン先生がマイクを口に銜えたりと変なことをするぐらいなのだが、全員ただ淡々と演奏しているだけに思えるのに何でこうも格好よくエキサイティングなのか訳がわからん。これが科学で解明不可能なカリスマ性というやつか。すげえ。オーラがすげえ。ドリアン先生なんて歌とか別に上手くもなければめちゃくちゃ美形なわけでもないただのおっさんなのにな。びっくりした。

DIR EN GREY
 次はARCH ENEMYまで大多数のメタラーは休憩時間とするところだと思うが、せっかくなのでDIR EN GREYを観に行く。曲自体は結構好きで何気なくアルバム全部持っていたりするのだが、これがライヴはもう全然駄目だった。とにかく演奏が下手でまとまりがなく、音自体は充分大きいのにそれが全く音圧として感じられない。もとの曲も音数は少なめではあるのだが、それ以上にリズムセクション(だけでなく全体的にですが)がガタガタなんでしょうな。ヘヴィ・パートのはずが全然ヘヴィじゃなく、リフ自体はっきりしない。加えて、他のヘヴィ・ロック・バンド達と差別化を図るべき(実際リフなどのセンスは凡庸そのものだし)ヴォーカルのメロディアスなパートも、歌唱力不足のせいでヘロヘロもいいところ。要するにやりたいことに技術が何一つついていっておらず、ぱっと聴きにはなんかごちゃごちゃした演奏にふにゃふにゃの声でなんか喚いてるなとしか聞こえない。わざわざ批判続出のアウェイな場所でやるからには偏見をねじ伏せるだけのものが必要だと思うが、そういうものが何一つ提出できていないと感じた。これではせっかくメタラーの前で演奏しても「やっぱりヴィジュか」と偏見をさらに固定することにしかならない。曲作りのセンスはいいものを持っているはずなので、もっと精進してもらいたい。
ヴィジュアル系バンド」がバンドとも呼べない存在になってしまったのはいつ頃からだろうかと考えてみる。90年代後半頃までのヴィジュアル系は基本的にちゃんとロックをやっていて、曲も演奏もしっかりしていたように思う。元祖ヴィジュアル系と呼ばれるXからして上手い人の集まりだったし、好きでよく聴いていたD-SHADEもMASCHERAも結構上手かった。今のヴィジュアル系と呼ばれる「バンド」、アリス九號とかシドとか雅などを聴いてみたことがあるが、こういった連中はまともな演奏力すらなく、曲も既成の型をなぞって適当にそれらしきものをでっち上げたガラクタの張りぼてのような代物で、ちゃんと音楽をやっているとは言い難い。ファンにしてもそれを許してしまっているところがあって、曲を聴いたことすらないのに顔が好きなだけでファンだと自称したりするらしい。要は化粧をしていて音楽めいたものをやっていればいいのであって、その存在意義は本来のバンド=楽隊とは別のところにあるわけだ。私はヴィジュアル系に詳しいわけでもなんでもないのだが、結構この傾向ってDIR EN GREY以降に徐々に始まったような感覚がある。まあDIR EN GREYは今のヴィジュアル系の中では一番音楽的に頑張っている部類に入るとは思うが、ヴィジュアル系筆頭といえるバンドのミュージシャンシップの低さがシーン全体のレベル低下に繋がっている気がしてならない。

ARCH ENEMY
 でARCH ENEMY。正直最近のアルバムは惰性で買っているところがあって、昔の曲以外興味ねーとか言いつつ、いざ始まってみるとアンジェラ加入以降の曲でも選りすぐられた名曲揃いで興奮する。とは言いながら1stの超名曲「Bury Me An Angel」が出てくるとやはりそれ以外の曲の印象は一気に霞むな。でもほんと他の曲も良かったんですよ。「Dead Eyes See No Future」はアンジェラ後では個人的に一番好きな曲だが、この曲の途中でモニターに映った観客席から伸びる無数の腕腕腕、そしてそれを本当に満足げに眺めるアンジェラの笑顔には涙腺が緩みかけた。演奏もいつも通りめちゃくちゃ上手い、つうか最後に私が観たときよりさらに上手くなってる気がするな。どの人もステージングに華があるし、こうしてライヴで観るとほんとにいいバンドだなと思う。

■UNITEDとANTHRAXNAPALM DEATH
 お次はUNITED。せっかく朝出るときにUNITEDの「NINE」を聴いてテンションを上げていたのだが、ここで極度の疲労とスイマーに襲われ、ぼけっと座り観しながら頭の上を轟音が駆け抜けていく状態。いいライヴしてんなーと思いつつもスイマーに侵された脳ではそれ以上の感想を抱けるはずもありませんでした。ごめんなさい。
 次のANTHRAXでも襲い来る腰痛とスイマーに勝てず、後方へ一時撤退、NAPALM DEATHのいるULTIMATE STAGEへ。この時間ともなるとかなりの数の死体が床に転がっており、長いすに座る人々も皆一様に項垂れて野戦病院のよう。椅子に座ってしばしNAPALM DEATHを鑑賞。ANTHRAXの裏番にもかかわらず結構な客入り、そしてNAPALM DEATHのかっこいいこと! それにしてもブラスト・ビートは落ち着くなあ。

MEGADETH
 しばらくブラスト・ビートに癒されてテンションは完全復活。物販に再び行ったりトイレに行ったりなどしてお次はいよいよ本日トリのMEGADETH。いやあもうこれがびっくりするぐらい良くてね。ムステイン大佐は異様なぐらい格好いいし、一新された大佐以外のメンバーは誰一人として知らないものの皆手練ればっかりで完璧な演奏しやがるし、初めて生で観た大佐自身のソロの弾きっぷりにもびびった。自分の今のバンドや、盛り上がり最高潮の観客の反応に心から満足している様子の大佐の笑顔が印象的。そして何よりそのセットリストが凄い。「Skin O' My Teeth」「Tornado Of Souls」「She-Wolf」「Hangar 18」「Symphony Of Destruction」「Holy Wars」、名曲の数々が間髪入れず次々と繰り出され息つく暇なく感動しっぱなし。むやみにかっこいいタイトルの新曲「Washington Is Next」も素晴らしかった。
 最後にこんな凄いステージが観られてまったく大満足。今日だけで2万円の元は取れてるんじゃあるまいかと幸せな気分で会場を後にしました。

■余談・Tシャツ■
 友人が物販で買ったTシャツについてものすごい事実が発覚、このTシャツには背中にバンドロゴがずらりと載っているのだが、なんと「SLAYERのロゴがない!」今回最大の目玉であるはずの大トリ・SLAYERの文字がどこを探しても見当たらず、2日目のヘッドライナーはDIOになっているのです。もうがっかりですね。


HOME PAGE : のこぎりパパ