おっさん

 晩飯を食いにてんやに行く。私とほぼ同時に入ったおっさん(まるっきりの他人)がいて、この人をおっさんAとする。私とおっさんAが注文を済ませた頃、もう一人おっさんがやって来て、おっさんAの近くに座った。この人をおっさんBとする。しばらくして、調理場の方から「味噌二丁お願いします」の声が聞こえたので、私とおっさんAの分の飯ができたのだろうと思い待っていたら、やってきた店員はおっさんBの前に丼を置いた。確かおっさんBはおっさんAや私より後に来たはずなのにおかしいなと思って見ると、おっさんAも呆気に取られたような顔をしておっさんBの方を眺めている。(おいおいそれ俺の注文したやつじゃねえのかよ)といった様子だ。さらに観察していると、おっさんBは何やら妙な顔をしてメニューと天丼の具を見比べ始めた。やはりおっさんAの注文を店員が間違っておっさんBの方に置いてしまったということらしい。おっさんAもやはりそれが自分の注文であると確信したようで、腹を立てたのかさっさと荷物をまとめて店を出て行ってしまった。おっさんBは「これ注文と違うんじゃないの」と指摘しつつも、「僕はこれでいいんだけどね」と元の注文よりいくらか高いそれを何も知らぬ様子で(あるいは知らぬ振りで)頬張っていた。おっさんA、かわいそう。バイトがまだ慣れていないようだったのも運が悪かった。おっさんBの前にブツを置くときに「ご注文の○○でございます」とか何とか言えば、おっさんBも「注文したのそれじゃないけど」とすぐに気付いて指摘できただろうにな。しかしおっさんAが店を出るときわざわざ「失礼します」と店員に声をかけていたのがいかにも真面目くさっていて笑えた。その後店員の間では少々混乱が生じていた模様。余った野菜丼はどうなったのかね。


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