IN FLAMES「COME CLARITY」

tawachi2006-01-31

 スウェーデンの元メロディック・デス・メタル・バンドによる8thアルバム。6th「REROUTE TO REMAIN」で突如として(一応、5th「CLAYMAN」からその萌芽はあったとは言えるが)アメリカを意識したようなモダンな音像を打ち出し、賛否両論を呼んだ彼ら。個人的にはあのアルバムの路線はそう嫌いではなかった(名曲レベルの曲も多数入っていたし)ものの、急に新しい要素を多く取り入れようとし過ぎたせいか、どうにも消化不良で散漫な印象を受けた。続く7th「SOUNDTRACK TO YOUR ESCAPE」では、メロディ自体を地味に押さえて攻撃性を前面に押し出し、またメロディを担う楽器をギターからキーボードに移すことによって、モダンさ加減をより自然に取り込むことに成功した。

 この新作「COME CLARITY」も、そんな前々作〜前作で進められてきたデジタル化/メジャー化路線をはっきりと踏襲した作風ではある。しかしながら、今作ではもともとの彼らの最大の武器であったツイン・ギターによる美しいメロディが物凄い勢いで復活しているのが嬉しい驚き。前作の1曲目「F(r)iend」的にへヴィなイントロで始まりながらめちゃくちゃメロディックに展開するオープニング「Take This Life」で否応なしに煽られた期待は裏切られることはなく、彼らの歴代アルバムの中でも最高クラスと言える珠玉のメロディの洪水は最後まで続く。いちいち悶絶級にメロディックな各曲のギター・ソロに快哉を叫ぶ向きも多かろう。無論単なる回帰ではなく、クリーン・トーンのヴォーカル・パートや数曲でのSLIPKNOTを思わせるへヴィなリフ、所々のデジタルな空間処理などは、ここ最近の路線変更がなければ有り得なかった要素である。しかしそれらの要素が、旧来の美しいツイン・リードを主体とした楽曲に最高に格好良い形で溶け込んでいるのがこのアルバムなのである。アンダースのクリーン・ヴォーカルもただナヨいだけではなくなってきており、哀切や孤独といった感情を表現するしっかりとした歌唱力を身につけている。この充実ぶりは、前2作はまるまる今作への布石だったのではと思わせるほど。これまでの総決算的な意味も込め、何の問題もなく最高傑作と断言できる素晴らしい作品だ。


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