DISSECTION「REBIRTH OF DISSECTION」

tawachi2006-08-20

 2006年8月中旬、DISSECTIONのリーダー、ジョン・ノトヴェイトは、ストックホルムの自宅にて灯した蝋燭の輪に囲まれ、傍らに悪魔の教典を携えて、己の頭を銃で撃ち抜き命を絶った。自らが成し遂げてきたことに満足し、サタニストとして誇り高い死を選んだのであろう彼の、生前にリリースされたこれが最後の作品となった。2004年、長い獄中生活を終えて再生したバンドが復活を告げたツアーの一日目、ストックホルムでのライヴの模様を中心に、インタビューやフォトアルバム等いくつかの特典映像を収録したDVDである。
 映像作品としては、あまり質が高いとは言い難い。当時、音楽活動はなんとか再開したもののバンドのラインナップは不安定で、流動を繰り返した末にようやく決まったメンバーであり、なおかつこれが復活後まさに初めてのギグだったということもあってか、演奏がまとまり切っていないと感じる場面がいくつかある。音質も悪く、まるでブートのようにふらふらと安定しない音量は実にいただけない。それでも、まとまりはいまいちとはいえ個々のメンバーのパフォーマンスは高レベルで、ジョンの存在感はさすがに圧倒的だし、他のメンバーの淡々と演奏する様子もなかなか格好いい。驚異的な完成度を誇る劇的極まりない楽曲群は言うまでもなく素晴らしいし、そして何より、この日を何年も待ち焦がれていただろうジョン・観客双方のテンションの高さがこれでもかというほど感じられて胸が熱くなる。「Unhallowed」のあの伝説的なギター・メロディに合わせ観客が合唱する場面などは、今となっては涙なしには観られない。
 DISSECTIONには来日経験はなく、昔のライヴ映像も数えるほどしか残っていないが、本作を観れば、ジョン・ノトヴェイトというミュージシャンがいかに素晴らしい、孤高の存在であったかということが改めてよくわかる。まったく惜しい才能を亡くしたものだと寂しく、死という最悪の選択をしたことには怒りたくもなるが、短くも濃い人生でこんなにも凄い音楽を残してくれた彼にはやはり最大の賞賛と感謝を捧げたい。黒い地平線の彼方へと旅立った彼の魂に栄光のあらんことを。


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