ホテルオブホラー

 何かよくわからんセミナーのようなもののためにヨコハマ買い出し紀行の舞台ともなっている某所へ行く。そこで泊まったホテルがなかなか凄いところで、鄙びているとかうらぶれているとかいうレベルを超越した情けない佇まいで楽しませてくれた。廊下や部屋は古い畳の饐えた臭いで充満しているし、窓はひび入りがデフォルト。テレビは21世紀にもなって未だにガチャガチャとチャンネルを切り替えるダイヤル式。1階ロビー?には昭和というか何というか妙なセンスのピアノバーのようなものがあり、これがまた白い手摺のついた無意味な螺旋階段とか毒々しい色の足下の照明などがあっていかがわしくも古臭い。部屋の椅子や机はがたがただし、クーラーなどは各部屋にあるのではなくてダクトから冷風が送られてくる仕組みでこちらではオンオフすらできず、室温を調節するには手で通風口の蓋を動かして閉まり具合を変えてやるしかない。殊に異様なのがトイレで、風呂と一体になったその部屋には何故か磯のような生臭さが充満し、タイル張りの不気味な浴槽と相俟って極めて不気味。用を足していると目の前の浴槽が突如血で満たされ髪の長い腐った女の屍体が恨みがましい眼でこちらを睨みながら立ち上がって来そうな気配である。実際、「このホテル新しいもんが何もねーなおい」などと仲間内で突っ込みを入れながら笑い合っているうちは楽しかったものだが、後で考えるとこれはホラーの舞台そのものではなかったかと思う。これで外が嵐だったりしたら完璧だ、と思っていたら夜は結構風も雨も強くていい感じになっていた。どう考えても宿泊客が次々と謎の変死を遂げていくパターンである。
 で本来の目的であるセミナーの方は特に何ということもなく終了。疲れたが昼飯の弁当が意外と美味しくて良かった。夜は懇親会だったが懇親とかいちいちだるいので、部屋に残って絵を描きながら同期のバカとだべる。馬鹿話に笑いまくって非常に有意義な時間であった。一眼レフ持って巣鴨とか谷中霊園とか撮るんだってさ。あと、セミナーで鋭い質問などされて返答に窮した場合は「ウマ……ウマウマウマレルー」と口走りながら部屋を飛び出すといいらしい。


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