DISSECTION「REINKAOS」

tawachi2006-05-02

 リーダー、ジョン・ノトヴェイトの衝撃の逮捕劇から9年、スウェーデンブラックメタル黎明期の重鎮DISSECTIONが、前作「STORM OF THE LIGHT'S BANE」以来実に11年ぶりに放つ復活作。ではあるが、「復活した!」と諸手を挙げて喜ぶことはできないのは、そのサウンドが余りにも変わってしまっているからだ。ここで聴かれるのはもはやかつての壮絶なブラックメタルではなく、スラッシュメタルあるいはメロデスと呼ぶべきサウンドであり、デス声の背後で鳴るのはほぼ正統派HMのそれ。ブラストもほとんどしないし、独特の寒々しさや邪悪さはすっかり鳴りを潜めてしまっている。わずかにタイトル曲「Reinkaos」や一部のアコースティック・パートなどにおいて、過去の禍々しいメロディ・センスが残り香のように感じられるのみである。とはいえ作品単体で見れば、このアルバムのそこかしこでフィーチュアされているメロディアスなギターは実に素晴らしいし、間違いなく秀作ではあると思う。前2枚と比べるとどうしても勿体ないとか残念だとかいう気持ちになってしまうが、この路線はこの路線で個人的には歓迎できる。サウンドは変わってしまったが、ジョンの才能が涸れたわけでは決してない。