遊佐未森 bonbonniere @ 銀座・ヤマハホール

 遊佐未森の初のピアノソロコンサート「bonbonnieire」に行った。ピアノ弾き語りのみということでひょっとして単調で眠くなったりはすまいか(最近展示会の準備のおかげで寝不足気味でもあるし)と少し不安もあったのだが、結論から言えばそんな心配は全く無用だった。私の席が今回運良く最前列(ただし演奏者自身はピアノの陰になっており演奏の様子はあまり見えないのが難点ではあったが)で、未森さんがピアノから離れて前に出てくると額の青筋や左肩の種痘の痕らしきものまで確認できたり時折目があったりするほど近距離だったことを差し引いてもかなり充実したコンサートだった。後半に行くにつれて盛り上がるように組まれたセットリストや、途中ピアノ無しの打ち込みバックで歌った「エデン」などのメリハリの効いた演出のためでもあるだろうが、何よりアグレッシヴなまでに活き活きした歌と演奏のおかげだと思う。歌の力は当然ながらアルバムを遙かに超えるものだし、バックがシンプルな分それがよりダイレクトに響いた気がする。テンポアップした「ポプラ」なんかはむしろライヴのバンド演奏よりも迫力があった。選曲も、いかにもピアノだけでアレンジしたらはまりそうなアコースティカルな曲から、「この曲をピアノで!?」みたいな曲まで曲調は幅広かったが、シンプルなアレンジに映えそうな分かりやすいメロディラインという点で共通していて、どれもこれも聴き応え充分。「Diary」「ポプラ」「夏草の線路」といった個人的に好きな曲が沢山聴けたのも嬉しかったし、中でも「Island of Hope and Tears」は素晴らしかった。歌入りの新曲2曲「春の雨」「クロ」もめちゃくちゃ出来が良く、来年4月にようやくリリースされるという新作への期待も大いに高まる。いつも通りに美しい舞台照明とも相俟ってひたすら幸せに浸れる1時間半でした。これだけピアノヴァージョンが素晴らしいんだから是非ライヴ盤とか作って欲しいなあ。


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