うちの後輩

 うちの後輩は普段私がボケまくっても適当に流してとぼけた答えしかしない鈍い奴なのだが、たまにこちらの思いつかない常識の裏をかいた鋭い意見を投げかけてくるので実はなかなかやる奴であることもある。昨日は動物園の猿山について質問してみた。動物園は珍獣を眺めに行くところであって、ニホンザルなんぞどこにでもうじゃうじゃいるものをわざわざ動物園まで行って見てもしょうがない上、うるせえし顔はむかつくし態度はでけえし一体何のために動物園の猿山は存在しているのかあんなもんあっても不愉快なだけではないかという私の疑問に対して彼曰く、「いじめるためじゃないすか」。なるほどつまり猿山は石を投げたりバナナを取り出しては檻の外でさもうまそうに食ったりして猿をいじめるというアトラクションだったのだな。餌をやるなとか石を投げるなとかいうのは建前上書いてあるだけ(もしくは単なる飾り付け)で、本当は厩務員とかにしたって普段のストレスを猿にぶつけて発散していたりするのであろう。これでまたひとつ賢くなった。ありがとう。
 それからこんなこともあった。私の同級生に味覚の狂った奴がいる。彼はあの澱粉の味しかしない糞まずいCoCo壱番屋のカレーを普通に食うことが可能であるとか、普段インスタントコーヒーを飲んでいるのにある時間違ってレギュラーコーヒーを買ってしまい(安かったのだそうだ)、仕方なしに高い高いとぶつくさ言いながらコーヒー道具一式を買い揃え、面倒臭え面倒臭えとぼやきながらコーヒーを淹れ、飲んで一言「これコーヒーじゃねえよ」とか、「自炊する」と言ってスーパーとかで100円のハンバーグや肉団子を買ってきてご飯にかけてうまいうまいと喜んで食ったりとかまあそのようないかれた人間である。ある時近所に新しいラーメン屋が出来、彼がたまたま入ってみて「ほんっとまずかった」と言うので期待して行ったら案の定結構美味しかったというようなこともあった。そこで私やその他の人たちは彼の味覚はどうしようもなく狂っているのだと解釈していたのだが、その後輩の解釈は全く違った。「それはきっと美味いと不味いの言葉の意味を取り違えているんですよ」だそうだ。なるほど素晴らしい逆転の発想。